Q:当社の一部門(例えば、ホテルであれば清掃部門)を外部の業者に外注し、その部門で働いていた社員を、その業者に転籍させました。
対象者は全員納得して転籍していますが、有給休暇の取り扱いだけが確定せず転籍となってしまいました。

本来は転籍の条件で決めておくべきですが、現場もすっかり失念してしまっていたようで、転籍先の業者に相談して、有給休暇の残日数を引き継いでもらうように働きかけたのですが、転籍先の業者に「いまさら」と言われ断られてしまいました。

最終的には、支度金という名目で当社側にて有給を精算して支払うことで決着をつけました。精算できたとは言え、全員転籍をしてしまい当社の籍がなくなっていますので、どうやってこの支度金を支払い、課税処理等、どうすればいいのでしょうか?

退職金として処理することが現実的

A : ご質問の件ですが、退職金(功労金でも構いません)として処理することが、税務処理的にも、既に転籍済みということも含めて現実的と考えます。
以下詳細です。

退職後に有給休暇に代わる金銭を支払う場合は、実際の雇用関係・勤務したことにより支払われる賃金とは異なり、退職金の扱いとして支給することとなります。

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_37.htm

受け取られる方には上記の退職所得申告書を提出してもらえれば金額的に実質非課税となります。退職所得であれば甲欄・乙欄で考える必要もありません。

ただし、退職所得は年始に提出する法定調書合計表に総額を記載する必要がありますので、関連部署・顧問税理士の方にも、ご連絡をお願いいたします。

加えて、通知書も用意し、本人に交付するようにしましょう。今回の事案は、特別に処理したということをご理解いただくことと、もう有給の件は持ち出さないようにしてもらうためです。

転籍にあたって決めておきたいこと

参考になりますが、転籍にあたって決めておきたいことは、給料の話もさることながら、気を付けておきたいポイントがあります。

  • 転籍は出向と異なり、合意が前提であると本人に伝えること
  • 退職金の扱い(転籍前の退職金を精算するのか、転籍後の会社に引き継ぐのか?)
  • 勤続年数の取扱い(別会社なので雇用関係はゼロリセットになるのですが、会社の都合で転籍させる場合は、勤続年数をどのようにカウントするのかは問題になります。)
  • 有給休暇の付与日(どちらか一方の会社の有給休暇が一斉付与の場合の、その切り替え)

など、勤続年数や勤務実績など時間に関わるテーマは、見落としがちですので注意が必要です。

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