Q:タイムカードの打刻時間が1分、2分オーバーしてしまっているものも労働時間に含めて計算するのでしょうか?端数を切り捨てて構わないのなら、どういう処理をすればよいか?
当社は建物の出入口に防犯の目的で入退館管理システムを勤怠システムとは別に設置しています。そのため、従業員の建物への出入り時間が履歴として残ります。
一方、勤怠システム(タイムカード)も設置しており、タイムカードでは従業員が作業現場に入る前と後の時間を履歴で管理しています。
従業員の労働時間については、勤怠システムでしっかりと管理していますが、「仕事が終わったあとに雑談をしていて、構内から退出する時間が遅くなってしまった」といったように、業務終了後の勤怠システムへの登録時間と、実際に建物から出た時間に、かい離がある場合は、何か問題になる可能性があるのでしょうか?
たとえば、
- 8:30始業、17:00終業の従業員が、実際に18:00まで残業をしたため、1時間の残業申請をした。
- その後に他の従業員と雑談や喫煙をしていたため、建物から退出した19時に入退館システムに履歴として残った。
このようなケースの場合、仕事の終了時間と建物から出た時間で1時間の差が発生するため、この1時間の時間差が労働基準監督署など指摘される可能性があるのでしょうか?
業務時間に対して賃金を支払うのが原則
仕事についている時間(業務時間)に対して賃金を支払うのが原則です。
雑談をしてたタイムカードまで歩いて時間がかかるなど、不就労の時間については計算に含めなくて構いません。
ですので、勤怠管理上は労働時間を管理しているタイムカードをもとに労働時間を管理すればよく、建物のセキュリティーシステムの退館時間を意識する必要はありません。
実際の終業時刻とタイムカード打刻が異なる場合の処理
次にタイムカードの打刻後に仕事をしていないという前提で、実際の労働時間とタイムカードの打刻時間が異なる場合は、どう処理をすればいいのでしょうか?
具体例で見ていくと、
- 18:00の定時に終業し、残業もしていない。タイムカードの打刻は18:01
→カット可能 - 18:00が定時だが、残業を18:10まで残業した。タイムカードの打刻は18:11
→18:10までは計算に含める - 18:00の定時に終業した。残業もしていないが、会社で着衣が義務の制服の着替えで18:10までかかり、18:10に打刻
→18:10までは計算に含める(制服の着用が義務のため着替えは労働時間に含みます) - 18:00が定時だが、17:45から仕事をせ、無断で帰り支度をしていた。タイムカードの打刻は18:10
→17:45までを計算に含み、15分は欠勤
となります。
端数の打刻のカットの要否を、給与計算担当者で判断するものではありません。上長によるタイムカードの承認の工程を必ずいれ、各日に残業を命じたのか否かを確認し、労働時間を特定することが大切です。
もし、タイムカード打刻後に、会社の命令を受けて仕事をしているのであれば、1分、2分であっても賃金の計算対象となります。
タイムカードの打刻と、施設の退館時刻に乖離がある場合
仕事をしていないにも関わらず職場にいることは(1)サービス残業など、超過労働に関する安全配慮、(2)機密情報の持ち出しなど不正の温床の抑止という意味でも好ましい状態ではありません。
終業時刻から退去時刻までの時間が長い者については、理由を確認したり、終業後にも職場に居残る人に対して、速やかに退去するように別途フォローをしましょう。
隠れて残業をしている、終業後に不正をしているなど、会社側にとってリスクがあります。従業員が「家に帰りたくない」と言っていても、家庭のことについて会社が関与するべきではありません。
速やかに退出を願い、従業員が帰宅したくないのであれば、近所の喫茶店で時間を潰してもらうようにしましょう。
部下の勤怠管理を嫌がる上司
「忙しいので部下の勤怠のチェックはしたくない」という上司が稀にいます。こういった上司に対して会社は、「部下の指揮命令権の行使と、勤怠管理についても上司の仕事である」ということを教え、管理者である以上、業務として行うように命令をしましょう。
「自分の仕事が忙しい」と駄々をこねる上司がいますが、上司の仕事は、個人として成果を出す事だけが仕事ではなく、「部下に指揮命令を出し、成果を確認すること」も上司の仕事になります。認識の相違があるようでしたら早々に指導を行い、改善する意思・行動が見られない場合は、降格も含めて上司に対して人事面談を行うようにしましょう。
あわせて読みたい
職場の問題が解決しない
「やりかた」の前に「ありかた」労働トラブルの発生や、あるべき姿が定まらない原因は「根本の考え方が揃っていない」ことも理由の一つです。これまでの経験や判断を振り返り、これからの自社/部門のあるべき姿を発見・共有する職場学習型の研修をご存知ですか?
そもそも「労働時間」の原則とは?
法律の”そもそも”に立ち返る「労働時間」とは始業の時刻から終業時刻までの間で会社の指示に従い業務を行わなければならない時間です。労務管理で配慮しなければならないのでしょうか?