Q:副業を禁止したいと思いますが、実際はどこまでがOKで、どこからがNGなのかよくわかりません。これまでの判例ではどのような判断がされているのでしょうか?

A:裁判例では、日常の業務に影響する場合や、会社の事業存続に影響を与えるような内容であれば解雇が有効とされる傾向があります。反対に日常の業務に影響のないような副業については、解雇無効とされる傾向があります。

厚生労働省で公表されている「副業・兼業の促進に関するガイドライン」で紹介されている裁判例を紹介します。

副業に関する裁判例

マンナ運輸事件(京都地判平成24年7月13日)

運送会社が、準社員からのアルバイト許可申請を4度にわたって不許可にしたことについて、後2回については不許可の理由はなく、不法行為に基づく損害賠償請求が一部認容(慰謝料のみ)された事案。

東京都私立大学教授事件(東京地判平成20年12月5日)

教授が無許可で語学学校講師等の業務に従事し、講義を休講したことを理由として行われた懲戒解雇について、副業は夜間や休日に行われており、本業への支障は認められず、解雇無効とした事案。

十和田運輸事件(東京地判平成13年6月5日)

運送会社の運転手が年に1、2回の貨物運送のアルバイトをしたことを理由とする解雇に関して、職務専念義務の違反や信頼関係を破壊したとまでいうことはできないため、解雇無効とした事案。

小川建設事件(東京地決昭和57年11月19日)

毎日6時間にわたるキャバレーでの無断就労を理由とする解雇について、兼業は深夜に及ぶものであって余暇利用のアルバイトの域を超えるものであり、社会通念上、会社への労務の誠実な提供に何らかの支障を来す蓋然性が高いことから、解雇有効とした事案。

橋元運輸事件(名古屋地判昭和47年4月28日)

会社の管理職にある従業員が、直接経営には関与していないものの競業他社の取締役に就任したことは、懲戒解雇事由に該当するため、解雇有効とした事案。

出典:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000192845.pdf

まとめ

副業の問題は、職務専念義務や会社の機密保持の問題と、個人の経済活動の自由のバランスが問題になります。
また、副業と言っても

  • アルバイトとして雇用され収入を得る
  • ウーバー配達員のように個人事業主として収入を得る
  • 株式や不動産の投資をして収入を得る
  • 老いた両親が営んでいる実家の家業を手伝っている(収入は二の次)

など様々なケースがあります。また、業種・規模によっても副業の線引きの引き方は異なってきます。社会保険労務士法人アイプラスでは、各社の実態に合わせた副業のありかたの提案をしています。副業制度を導入する際には、ご相談ください。

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