人を雇ったり、社員を区分をするときに「正社員」や「契約社員」という言葉を使います。

しかし、労働基準法など法律の中では「正社員」や「契約社員」という言葉は出てきません。そもそも「正社員」や「契約社員」とはどういう人を言うのでしょうか?

また、「パート」と「アルバイトの」違いも良くわかりません。
なんとなく、「パート」と聞けば主婦の方、「アルバイト」と言えば学生やフリーターというイメージがありますが「学生時代からアルバイトとして働き続け、主婦になっても引き続き勤務している人」は、いつから「パート」になるのでしょう?

厚生労働省の労働経済動向調査の定義

厚生労働省の労働経済動向調査では「正社員」や「臨時」という言葉が出てきますが、そもそも、どのような人を「正社員」と区分しているのでしょうか?
労働経済動向調査に用語の定義がありますので、厚労省の定義を確認してみましょう。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/keizai/2011/

【1】常用労働者

次のいずれかに該当する労働者をいう。なお、下記【2】~【4】は常用労働者の内数であるが、【5】の派遣労働者は含まない。

  • 期間を定めずに雇われている者
  • 1か月以上の期間を定めて雇われている者
補足

2018年2月調査から”1か月以上の期間を定めて雇われている者”を変更し、「1か月を超える期間を定めて雇われている者」から「1か月以上の期間を定めて雇われている者」に変更されました。

また「日々又は1か月以内の期間を定めて雇われている者で、前2か月それぞれに18日以上雇われた者」は削除されました。

【2】正社員等

雇用期間を定めないで雇用されている者”又は1年以上の期間の雇用契約を結んで雇用されている者”をいい、下記【4】のパートタイムは除く。
なお、下記【5】の派遣労働者は含まない。

補足

2008年2月調査から”又は1年以上の期間の雇用契約を結んで雇用されている者”の追加により定義が変更されています。
また、併せて名称を 「常用」から「正社員等」に変更されています。

【3】臨時

1か月以上”1年未満”の期間を定めて雇用されている者及び期間を限って季節的に働いている者をいい、下記【4】のパートタイムは除く。

補足

2008年2月調査から”1年未満”の追加により定義が変更されています。

【4】パートタイム

1日の所定労働時間又は1週間の所定労働日数が当該事業所の”正社員“のそれより短い者をいう。

補足

2008年2月調査から所定労働時間または、所定労働日数の比較対象が「一般労働者」から「正社員」に変更されています。

【5】派遣労働者

労働者派遣法に基づいて他社(派遣元事業所)から当該事業所に派遣されている者をいう。

図で整理してみた

厚生労働省の労働経済動向調査での区分を図で表現すると、以下のようになります。「正社員等」は1年以上の有期雇用契約が含まれるので、いわゆる、雇用契約の契約期間が1年で、毎年契約を更新している、いわゆる「契約社員」も「正社員等」に含まれることになります。

世間一般の語感の定義

正社員・契約社員で考えると分かりにくい

しばしば「正社員」「契約社員」、「パート」「アルバイト」と言った言葉で人事制度を議論していくと話が錯綜したり、「定年退職後に再雇用された人は、どう呼べばいいの?」などというように、混乱することがしばしばあります。

「正社員」や「契約社員」という呼び方に明確な定義がありません。自社の人事制度と労働法との整合性を考える場合は、

  • 「無期雇用契約」もしくは「有期雇用契約」のいずれなのか?
  • 「所定労働時間を勤務」するのか「短時間勤務」のいずれなのか?

で考えていくと、シンプルに整理できます。

契約期間×労働時間の4象限で整理する

世間一般でいう「正社員」や「契約社員」を、「無期雇用 or 有期雇用」「所定労働時間を勤務 or 短時間勤務」の4象限で区分すると以下のようになります。

呼び方は自由

それぞれの働き方が4象限のどこに含まれているのか明確になっていたら、象限ごとの呼び方を決めましょう。

各象限に該当する雇用形態を、どのように呼ぶかは各社の自由です。
例えば、「”有期雇用”で”所定労働時間勤務する”」者を「有期社員」、「”無期雇用”で”短時間労働する”」者を「短時間正社員」と呼んでも構いません。(もちろん、就業規則で定義をしておきましょう。)

「パート」と「アルバイト」は何が違うのか?

タイトルのテーマの答えになりますが「パート」も「アルバイト」も「短時間で労働する」者であり明確な区分はありません。

もともと「パート」は”part‐time job”や”part‐time worker”という英語を語源とし、「アルバイト」はドイツ語の「Arbeit」(workの意味)から来ており、そもそもの語源が違うのであって、性別や年齢の違いから区分されている訳ではありません。

一般的に雇用形態ごとに、処遇や福利厚生の内容が異なる企業が多いと思います。呼び方と実態の違いが曖昧だと思わぬトラブルになります。

また、同一労働同一賃金の議論をする際に、どの雇用形態と、どの雇用形態を比較して議論しているのか分からなくなりますので、自社の雇用形態ごとの呼称の定義を定義して就業規則に記載しておきましょう。

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