Q:「管理職は労働組合の組合員にはなれない」ということは聞きますが、人事部門や経営企画部門の非管理職の従業員などは組合員になれるのでしょうか?会社の機密情報を扱っているのですから、会社の手の内が労働組合に知れるのも不公平な気がします。

A:「社内のサッカー部が労働組合ではない」というのは労務に詳しくなくても理解できます。労働組合である条件は「労働組合法」という法律で決まっています。どのような条件であるか見てみましょう。

なぜ社員親睦会は労働組合と言えないのか?

労働組合の条件

まずは労働組合とは、どういう条件が必要なのか見ていきましょう。労働組合の条件は、労働組合法の第2条で要件が決められています。

該当“しなければならない”条件は

  • 労働者が主体となって自主的に組織した団体、または連合団体であること
  • 労働者の労働条件の維持改善、その他労働者の経済的地位の向上を図ることが、主たる目的であること

が必要です。

該当“してはいけない”条件は

  • 使用者の利益代表者の参加を許すもの
  • 使用者から経理上の援助を受けるもの
  • 共済事業その他福利事業のみを目的とするもの
  • 主として政治運動または社会運動を目的とするもの

のいずれにも該当しないものであることが条件です。

退職した従業員は組合員となりえる

労働組合法の労働者の定義は「失業者」も含まれます。(労働基準法とは異なる)
そのための特定の企業の従業員が解雇されたとしても、組合員資格が当然に組合員資格が消滅することがないのが原則です。(昭和23.6.5労発262号、昭和24.4.4労発146号)

ただし、例外として組合の規約で「組合員となれる者は従業員に限る」としている場合は別となります。

一般人は労働組合を結成できない

労働組合は労働者が主体となって組織するものですので、「労働者とは言えない一般市民の団体が労働組合でない」ことは当然であるとされています。

  • 最高裁大法廷判決 昭和22年(れ)319号 板橋食糧脅迫被告事件
  • 昭和24年(れ)1601号 川崎市役所暴力行為等処罰法違反・住居侵入被告事件

前半まとめ:労働組合の定義は明確

サッカー部は「労働条件の維持改善」が目的ではありませんし、持株会も「福利事業が目的」ですので、労働組合に該当しません。また、労働者のいない自称ユニオンは「NPO法人」などを名乗ることになりますし、組合でない以上、団体交渉はできません。

では、誰が組合員になれないのか?

「使用者の利益代表者の参加を許す組織」は労働組合になりえないのは分かりました。この「使用者の利益代表者」とは一体誰のことを指すのでしょうか?

組合参加がNGな人は、労働組合法で決まっている

労働組合法 第2条(労働組合)

~役員、雇入解雇昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者、使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが当該労働組合の組合員としての誠意と責任とに直接にてい触する監督的地位にある労働者その他使用者の利益を代表する者の参加を許すもの~

第2条の対象外となる者について「労働事務次官通牒」という通牒が出ています。この通牒に対して行政通達もでています(分かりにくい。。。)。以下の者は労働組合への参加は認められないとされており、労働組合法と通牒は解釈上異なることがないとされています。(昭和24.6.9 労働省発労第33号)

  • すべての会社役員、理事会又はこれに類似するものの構成員
  • 工場支配人、人事並びに会計課長および人事、労働関係に関する秘密情報に接する地位にある者
  • 従業員の雇用、転職、解雇の権限を持つ者及び生産、経理、労働関係、対部外関係、法規その他の専門的事項に関する会社の政策決定についての権限を有し、あるいはこれに直接参加する者
  • 労務部(名称を問わずこれに該当する部課)の上級職員
  • 秘書及びその他人事、労働関係についての機密の事項を取り扱う者
  • 会社の警備の任にある守衛(昭和24.2.2 労働省発労第四号)

警備員も労働組合の組合員になれないの?

雇入、解雇、昇進又は異動に関して、直接の権限を持つ監督的地位にある労働者

人事部員が全員該当するのではなく、(1)労働者に対して監督的地位にあり、(2)労働者の雇入れ、解雇、昇進または異動について「直接」を決定する権限を有する者とされています。

使用者の「労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項」に接する者

監督的地位には該当しないが、機密情報を扱う者で、仮にこの者が組合員として行動すると、矛盾が発生するような者を指します。こちらも「直接的に」矛盾を起こす者を指しています。

労務・人事部の上級職員が該当する可能性が高いとされます。ちなみに、「課長」だからと言って監督的な地位に必ず該当するとは限らず、実質的にどうなのか?で判断されます。※「エクセルの集計をしているだけ、最終決裁は上長」という方は該当しません。

守衛

この「守衛」は従業員に対する取締的権限を有している者をさしますので、いわゆる「ガードマン」は対象になりません。例えば、タイムレコーダーを管理し、早退者の申告書を検査する権限を有していたり、構内で従業員に対する取締権限を持っている者を指します。

まとめ

マニアックな論点ですが、上級職員であっても労働者であることには違いありません。

上級職員は一般の組合員から見れば会社と一体とされる者に該当しますが、使用者と上級職員自らの労働条件を交渉することはありえますので、一般労働者向けの組合とは別に組合を結成することや、別の組合に加入することを、労働組合法2条が禁止している訳ではありません。

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