前回は、あっせんの申立書が届いてから、あっせんを受ける/受けないの判断のタイミングでしたが、今回はあっせん当日の流れになります。

そもそも労働紛争はどう解決するのか?

従業員から「出るとこに出てやる」と言われました。労働紛争になると裁判になるのでしょうか?

裁判所「外」の労働紛争の解決手続き「あっせん」のながれ

ある日突然「あっせん開始通知書」が労働局から送られてきたら、どのように対応すればいいのでしょうか?

あっせんの日までの準備

(回答する場合)答弁書を作成する

あっせんを受ける場合は、相手の主張に対してこちら側の主張を書面でしていくことになります。こちらの主張を書いた書類を「答弁書」と呼びます。

答弁書は、相手の主張に対して、ひとつずつ「認める」「争う」「分かりません」を返していくことになります。また、相手の主張とこちらの主張が異なる場合(争う場合)は、具体的に何が違うのかを書いていきます。

相手の主張が、どこが事実で、どこが主張なのか、何を言っているのか分からない、作文のような書類が送られてくることもあります。
その場合であっても、きちんと主張を読み込んで、「認める」「争う」「分かりません」を回答していきましょう。

期日の日程を調整する

あっせんを受ける連絡をすると、事務局より電話があり、あっせんの期日の調整をすることになります。いくつかの候補日を提示すると、相手方とあっせん委員のスケジュールを調整してくれます。

日程が決定するとあっせん期日の案内が届き、あっせんの日時の他、あっせん場所や、あっせんの注意事項の案内が同封されています。

あっせんの回答をする際に答弁書を作成・提出していない場合は、事務局の指定する期限までに、答弁書と添付資料(就業規則や賃金台帳、雇用契約書、出勤簿などの勤怠情報)を用意して、事務局に送ります。

あっせんの当日

現地に向かう

あっせんの当日は指定された場所に向かいましょう。東京の場合は千代田区の九段の東京労働局の庁舎内にあります。

特定社会保険労務士に同席もらう場合は、事前に集合場所と時間を決めておきます。相手方とばったり鉢合わせにならないように、あっせんの会場から少し離れた場所で集合すると良いでしょう。

現地到着&待合室での待機

労働局内に到着し、あっせんの部署に内線をかけると、担当者が迎えにきて、控室に案内されます。控室と言っても家庭裁判所や病院の待合室のような、大人数が待機する場所ではなく、普段は労働局の職員が会議や打ち合わせで使っているような、2畳ほどのパーテーションで囲まれた場所になります。隣にロッカーや段ボールが積み上げられているような場所です。

あっせん委員との対面

待機室で待っていると、事務局の担当者が迎えに来てくれて、あっせんの部屋に行きます。あっせんの部屋にはあっせん委員が1名中央に座っているので、向かい側に座る形で対面し、中間の席に事務局の担当者が1名座ります。ます。テーブルをテニスコートに見立てたら、ちょうどテニスのシングルスのような位置関係になります。

ちなみに、あっせんの場には、申立人と相手方が交代で入り、控室も別の場所になりますので、両者が顔をあわせることはありません。

あっせん委員は、事前に提出した資料を一読していますが、双方の主張の食い違いを確認するだけであり、内容の正確性は検証しません。極端な例ですが、事実無根の主張を書かれていても、その内容が正しいかどうかについてまでは検証しないのも、訴訟と違う大きな特徴になります。

あっせん委員は「ずいぶん、お互いの主張が違うけど、どうなの?」「あなたとしては、今回の件はどうしたいの?」という感じで質問をしてきます。あっせん委員はこちら側の主張を確認したら「そうしたら、相手の言い分も聞いてみます」という具合に話を終わらせ、控室に戻るように促し、事務局に相手方を呼び出す指示をし、こちら側には控室に戻るように促します。

このようなあっせんの部屋と控室を何往復かして、あっせんは進んでいきます。

あっせん案を受け入れる/拒否する

控室の往復を何度かしていくと、あっせん委員は徐々に歩み寄りの着地点を提案してきます。もちろん提案ですので拒否することも可能ですし、妥協できるのであれば、あっせん案に合意をしていきます。
残業問題も解雇問題も、基本は解決のための金銭の金額に折り合いを付けることになりますが、付随して社内で何か再発防止の対策を取るなどが付随することもあります。

あっせんの終了

あっせんが成立した場合は、あっせん委員が「このように合意することとなりました。」と合意を宣言し「合意書」を作成して、あっせんは終了します。
一方、お互いの折り合いが付かない場合は、あっせん委員は「今回のあっせんは不成立ということで終了します。」と宣言し、あっせんは不成立となります。あっせんは成立しませんでしたので、訴訟・労働審判に向かうことになります。

合意するorしないの判断

「とりあえず、間をとってこんな感じでどう?」「お互いの言い分を踏まえると、こうしない?」という感じで、あっせん案が出てきますので、あまりにも譲歩できない内容であったり、訴訟や労働審判をした方が経済合理性がある場合は、断るとういう選択肢もあります。

「面倒くさいので、これでいいや」というラインであれば、その金額で合意をすれば良いと考えます。

結局、金銭解決しかないのでは?

あっせんを起こしたことに対して、不利益な扱いはNGとなっています。しかし、例えば、「元の職場に戻して欲しい」という話になって、「もとの職場に戻す」という合意になっても、日々職場に申し立てた本人がいる姿を見て、普通の人間が心情的に、心穏やか&公平に扱えるのかというのは疑問です。(怒りの感情だけでなく、逆に腫れ物に触る感情かもしれません。)

ちなみに、あっせんは労働者側からの申立てが圧倒的に多いのですが、会社側からも申し立てをすることができます。
たとえば「退職勧奨の合意」など、会社から働きかけたが、行き詰ってしまった場合に、会社側としてもあっせんは有効なものになります。
「評価に納得しない」などというテーマは、あっせんになじまないかもしれませんが、金銭で解決できる内容の場合は、有用かと思われます。

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