【質問】異動時の時給変更、不利益変更になるのか?

夜勤を希望しているアルバイトさんが、夜勤なしの拠点から、夜勤有りの別の拠点への異動を希望しています。拠点ごとに時給が異なるため、異動先の時給が現拠点の時給より低くなる場合、不利益変更になるのでしょうか?

具体的には、

  • 現所属(A拠点):時給1,200円:日勤シフトしかない
  • 異動先(B拠点):時給1,100円:夜勤シフトがある(夜間帯は時給1,375円)

となっています。

【回答】異動時の時給変更をスムーズに進める方法

今回のケースでは、本人と会社で合意したうえで労働条件を変更していますので、法的には直接的な問題はありません。しかし、賃金政策の透明性や公平性に関しては配慮が必要です。

同一労働・同一賃金の適用範囲とは?

  同一労働・同一賃金の原則は、主に正規雇用者と非正規雇用の間の賃金格差に焦点を当てています。同一人物が、「異なる労働条件下」で「異なる賃金を受ける」場合、この同一労働・同一賃金原則は適用されません。

しかし、同じ仕事にも関わらず拠点によって賃金が異なる状態ですので、①仕事に対する賃金の部分と、②拠点に関する賃金の部分を切り分けるなど、賃金の支払いの根拠を明らかにして、公平性を保つための配慮は必要です。

ルールに従っていても従業員の不満が生じる可能性があります。具体的な解決方法や説明の仕方についてご相談いただければ、より詳細なアドバイスが可能です。

地域差による賃金設定は問題ない?

  地域による物価水準の違いや、職種に応じた採用市場の困難度に基づいて、賃金に差を設けることは一般的です。法的には問題ありませんが、①地域係数をどのように設定しているのか、②地域係数の見直しのタイミングはいつなのか、など賃金テーブルの運用ルールを明確にすることで、従業員からの理解を得やすくなります。

地域差を理由にした賃金設定は誤解を招きがちです。自社のルールが業界標準に合っているか確認したい場合は、ぜひご相談ください。

深夜労働と割増賃金の重要性

労働基準法で、夜22時から翌朝5時までの深夜労働に対しては、割増賃金を支払わなければなりません。地域や労働市場の状況によっては、拠点間の賃金差で「A地域の日勤の時給 > B地域の夜勤の時給」というケースも発生する可能性があります。この点についても、従業員への説明は丁寧に行うことが重要です。

労働基準法第37条第4項(時間外、休日及び深夜の割増賃金)

使用者が、午後十時から午前五時まで(~省略~)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

説明不足で従業員の誤解が生じやすい部分です。説明のポイントや異動面談のやりかたにも工夫やポイントがあります。

「対応策」と「説明の仕方」にも注意が必要

今回のケースでは、労使で合意をしたうえでの異動になるので、直接的な問題は起こりませんが、人事権を発令した異動命令を掛けた場合は、従業員の不満や誤解を産み出す可能性があります。

アルバイトの賃金テーブルであっても、「時給○円」と一本で運用するのではなく、以下の対応をしておくことが望ましいでしょう。

  • 基本給(仕事給や役割給)部分は、同一労働同一賃金に対応するため全国同額とする。
  • 地域格差部分は、地域加算や地域係数を設定し、設定ルールを決めておく。
  • 深夜割増の法的なルールについて説明するとともに、アルバイト用の賃金規程も整備しておく

アルバイトであっても、賃金の支給根拠を明確にしておき、不公平感を解消するためのコミュニケーションを積極的に行うことが望ましいです。特に異動希望者へは賃金の変動があることを前もって伝え、理由を面談時に説明することで、納得感を持ってもらうことが重要です。

賃金に関するトラブルを未然に防ぐには、ルールの整備と従業員への適切な説明が不可欠です。本記事が解決の一助となれば幸いです。
労働トラブルの解決時には、さらに具体的なアドバイスを提供しています。