「休職復職」とは病気等の理由によりお休みをすることです。多くの会社では休職制度がありますが、労働基準法で義務付けられた制度ではありません。

また、休職・復職はトラブルとなることがいのも特徴です。「休職復職」について、どのように設計をし、どのような点を労務管理で配慮しなければならないのか説明していきます。

休職(私傷病休職)とは

休職(私傷病休職)とは、労働者が在職中に業務外の事情(休日の交通事故や病気・メンタルヘルス疾病等)により一定期間の欠勤を続ける場合の休職です。

本来であれば、長期間労務の提供ができないことは労働契約の債務不履行となるため、普通解雇理由に該当しますが、一定期間療養の機会を与え、解雇を猶予する制度です。
(法律で義務付けられた制度ではありません。会社で任意に定める制度です。)

「休職」の取り扱い

休職は人事異動の一種ととらえる

休職は有給休暇のような休暇ではなく人事異動の一種ととらえてください。

人事異動の一種ですので、本人が勝手に取得する/直属の上司の一存で認めるというものではありません。必ず、人事として休職の要否を審査して休職を判断しましょう。

休職期間や休職回数がトラブルになりがちです。休職させる場合は、必ず人事発令を行い発令日・休職期間を正確に管理していきましょう。

「私傷病休職を利用せずに解雇は可能か?

「私傷病休職を利用せずに解雇は可能か?」 という選択肢もありますが、休職制度の趣旨に立ち返ると、制度を設けている場合にこれを利用せずに解雇することは、解雇権の濫用につながる可能性が高いと考えられます。

ただし、復職の可能性がない場合、制度が復職を前提となっているので、私傷病休職を利用せずに解雇することは可能と考えられます。(岡田運送事件 東京地 平14.4.24)
この場合は、就業規則で「復職の見込みのない傷病を除く」と明記することが望ましいでしょう。

「復職」の取り扱い

復職の方法についても会社は自由に設定することができる

前述のとおり、休職制度は会社が任意に定める制度ですので、復職の方法についても会社は自由に設定することができます。「診断書があれば自動的に復職」などとならないよう、必ず会社の判断をもって復職を認めるようにしましょう。

復職は、雇用契約通りの業務が遂行できることが条件になりますので、原則、健康状況を鑑み休職前の業務に復職させます。(復職当初は短時間勤務とし、一定期間後通常の勤務に変更する場合も含む)

ただし、労働契約上職務内容が特定されていない場合などは、休職前の職務以外にも、現実的に配置可能な他の業務も考慮することが定着しています。

会社の指定する医師の受診を命じることが可能

合理的かつ相当な理由があれば、会社の指定する医師の受診を命じることが可能です。主治医と産業医で意見が異なる場合、復職可能かどうかの判断材料を把握したうえで意見を述べているかがポイントになります。

復職時の医師の診断について判例を見ていくと、業務の実情をより把握しているという点から、産業医の意見を採用されるケースが多いです。
(日本通運事件 東京地裁 平23.2.25、コンチネンタル・オートモーティブ事件 横浜地裁 平27.1.14)

休職・復職時はマスターメンテナンスが必要

定期的に社員の昇格、異動、転居、家族構成の変更が発生します。会社の人事発令や身上変更が行われていないか定期的に確認していきましょう。

休職・復職した者の確認

(休職した場合)支給額、住民税額、その他控除額は0円にしたか?
(休職した場合)社会保険料は毎月請求するか?/立替か?
(休職した場合)傷病手当金の請求をしたか?
(復職した場合)支給額、住民税額、その他控除額は元に戻したか?

休職に関するQ&A

休職制度を適用せずに解雇できるのか?

休業期間内に復帰できる見込みがなければ、休職制度を適用せずに解雇してもよいですか?

Q
ある社員が重い病気で倒れました。当社には傷病で勤務に堪えない場合には最長1年間の休職を認める「私傷病休職制度」がありますが、医師の診断によれば1年以内に復帰するのは絶望的とのことです。この場合、休職制度を適用せずに解雇することは可能でしょうか?
A

「1年以内に復帰するのは絶望的」とのことですが、傷病の回復可能性が少しでもあるような場合には休職制度を適用し、休職期間中に傷病が回復したときには復職させ、他方で回復しなかったときには、当然退職として労働契約を終了させるのが妥当であると考えます。

休職制度を適用する余地があるか否か、すなわち、休職制度を利用した場合の回復可能性の有無の判断が重要となります。しかし、この判断は専門的な知識に基づく将来の予測判断となりますので、極めて難しいと言わざるを得ないでしょう。

休職期間中に傷病が回復する余地が少しでもある場合、休職制度を適用しないままされた解雇は、解雇権を濫用したものとして違法・無効と判断される可能性があります。そこで、実務上は回復可能性がまったくないことが明らかであるような極めて例外的な場合を除き、直ちに解雇するのではなく、まずは休職制度を適用するのが妥当でしょう。

休職制度は休職開始時よりも、復職時にトラブルになりがちです。どのような条件のとき復職OKなのか? 誰がOKと言ったら復職させるのか就業規則で明確にしておくと安心です。

休職時の社会保険料は・・・?

Q
病気やケガにより休職している人がいるのですが、支払うお給料が日割計算などで少額となってしまうと、社会保険料が天引きしきれずに差引支給額がマイナスとなってしまいます。
この金額はどうしたらよいのでしょうか・・・?社長はかわいそうなのでその分がマイナスにならないように支払額を調整すれば?と言っています。
A

本人に請求し払ってもらってください。実務上は振り込んでもらうか、現金で預かります。産前産後休業や育児休業の場合は、社会保険料が免除されますが、病気やケガにより休業した場合や介護休業の場合は2016年8月現在、免除の制度はありません。

支払額を調整して差し引きをゼロ円にする処置を行うことは、つまり、本来負担すべき社会保険料を会社が負担したということになり、お給料が支払われているとみなされます。給付を受ける場合は、給付金額からその分は差し引かれてしまう可能性があります。社会保険料はそのままマイナスで計上してください。

健康保険料・介護保険料

休業時の金額がそのまま継続して本人負担となります。
※それぞれ、途中、料率変更があれば金額が変動します

雇用保険料

総支給額に対して料率を乗じて計算しますので、支給額がゼロ円であれば、本人負担、会社負担ともにゼロ円です

住民税

本人負担です。社会保険料と同様に、本人に請求し払ってもらいます。長期になる場合は普通徴収(本人納付書振込)に切り替えも可能です。

早期に復職したが戻る場所が無い場合、会社都合の休業になるか?

Q
私傷病で休職中の社員から、「予定より早く治ったので来月から出社できる」との連絡がありました。休職規程では「傷病が治癒した場合、復帰させる」と定めていますが、同人が休職前に申告した復帰予定時期は半年以上先です。その予定に合わせて契約社員を雇っており、今、出社されても困ります。当初予定していた期間はそのまま休職していてもらいたいのですが、その場合、使用者の責に帰すべき事由による休業となるのでしょうか?
A

休職事由となる傷病が治癒したことが確認できた場合、なお休業させるのであれば、使用者の責に帰すべき事由による休業となり、賃金を全額支払う必要が生じます。

この場合、休職規程で「傷病が治癒した場合、復職させる」と定めているので、治癒の事実を確認した結果「健康」と判断され、配置される現実的可能性があると認められる業務が他にあればその業務に復職させなければならないからです。

「治癒」と「完治」は分けて考えた方がよいです。「これ以上元に戻らない」という状態も「治癒」と言いますので、「治癒しているが、職務遂行能力は、元通りでない」のかどうかは、復職時に確認すべきですし、就業規則にも明示すると、より安心です。

あわせて読みたい

そもそも「年少者」とは?

法律の”そもそも”に立ち返る

「年少者」とは満十八才に満たない者のことを指します。この記事では「年少者」について、労働基準法などでどのような定めがあり、労務管理で配慮しなければならないのでしょうか?

職場の問題が解決しない

「やりかた」の前に「ありかた」

労働トラブルの発生や、あるべき姿が定まらない原因は「根本の考え方が揃っていない」ことも理由の一つです。これまでの経験や判断を振り返り、これからの自社/部門のあるべき姿を発見・共有する職場学習型の研修をご存知ですか?