会社として保管しなければならない「法定帳簿」である「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」のことを「法定三帳簿」と呼びます。これらの「法定三帳簿」とは、どのようなものなのでしょうか?

労働基準法第107条(労働者名簿)

会社は「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」を整備することが必要とされており、これらの帳簿をまとめて「法定3帳簿」とよびます。

労働者名簿とは

労働者名簿

第107条 使用者は、各事業場ごとに労働者名簿を、各労働者(日日雇い入れられる者を除く。)について調製し、労働者の氏名、生年月日、履歴その他厚生労働省令で定める事項を記入しなければならない。

② 前項の規定により記入すべき事項に変更があつた場合においては、遅滞なく訂正しなければならない。

労働者名簿の記載事項(労働基準法施行規則第53条)

性別、住所、従事する業務の種類、雇入の年月日、退職の年月日及びその事由(退職の事由が解雇の場合は、その理由を含む、死亡の年月日及びその原因

労働基準法第108条(賃金台帳)

賃金台帳とは

賃金台帳

第108条 使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。

賃金台帳は労働基準法第108条、および労働基準法施行規則第54条で定められている項目の記載をしなければなりません。

賃金台帳の記載事項(労働基準法施行規則第54条)

氏名、性別、賃金計算期間、労働日数、労働時間数、法第33条もしくは法第36条第1項の規定によって労働時間を延長し、もしくは休日に労働させた場合または午後10時から午前5時までの間に労働させた場合には、その延長時間数、休日労働及び深夜労働時間数、基本給、手当その他賃金の種類ごとのにその額、労使協定に基づいて賃金の一部を控除した場合はその額

ちなみに、「賃金台帳」と個人に配る「給与明細」は同じシステムから出力されますが、一般的な給与明細での記載事項は以下のような情報が掲載されています。

  • 労働日数: 給与集計期間の所定労働日数
  • 出勤日数: 給与集計期間に出勤した日数
  • 欠勤日数: 給与集計期間に欠勤した日数
  • 有給休暇日数: 給与集計期間内有給休暇を取得した日数
  • 遅刻回数: 給与集計期間に遅刻した回数
  • 早退回数: 給与集計期間に早退した回数
  • 時間外労働:給与集計期間に残業した時間

基本給や役職手当など支給項目は会社によって異なりますが、その他、各社共通で掲載する項目は以下のものがあります。

  • 健康保険
  • 介護保険
  • 厚生年金保険
  • 雇用保険
  • 所得税
  • 住民税

出勤簿とは

出勤簿とは、①タイムレコーダー等の記録、②使用者が自ら始業・終業時刻を記録した書類を指します。

その他にも、③残業命令書及びその報告書、④労働者が記録した労働時間報告書等といった労働時間が確認できる書類も出勤簿に含まれます。

労働時間の適正な措置

働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(平成29年1月20日策定)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/070614-2.html

(1)始業・終業時刻の確認及び記録

使用者は、労働時間を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・ 終業時刻を確認し、これを記録すること。

(2)始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法

使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法によることとされています。

  • 使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。
  • タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。

(3)自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置

自己申告制により始業・終業時刻の確認を行わざるを得ない場合、使用者は次の措置を講ずることが求められます。

  • 申告者に対する十分な説明
    自己申告制の対象となる労働者に対して、本ガイドラインを踏まえ、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。
  • 管理者(確認者)に対する十分な説明
    実際に労働時間を管理する者に対して、自己申告制の適正な運用を含め、本ガイドラインに従い講ずべき措置について十分な説明を行うこと。
  • 実態の調査
    自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。
    特に、入退場記録やパソコンの使用時間の記録など、事業場内にいた時間の分かるデータを有している場合に、労働者からの自己申告により把握した労働時間と当該データで分かった事業場内にいた時間との間に著しい乖離が生じているときには、実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。
  • 報告内容の検証
    自己申告した労働時間を超えて事業場内にいる時間について、その理由等を労働者に報告させる場合には、当該報告が適正に行われているかについて確認すること。
  • 正しい労働時間を申告できる環境作り
    使用者は、労働者が自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設け、上限を超える申告を認めない等、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならない。
    また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。

    さらに、労働基準法の定める法定労働時間や時間外労働に関する労使協定(いわゆる36協定)により延長することができる時間数を遵守することは当然であるが、実際には延長することができる時間数を超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが、実際に労働時間を管理する者や労働者等において、慣習的に行われていないかについても確認すること。

労働基準法第109条(記録の保存)

記録の保存

記録の保存

第109条 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。

あわせて読みたい

そもそも「労働契約法の原則」とは?

法律の”そもそも”に立ち返る

「労働契約」は本来どのような契約を結んでも自由であることが原則です。しかし、制限がない場合は、相対的に立場の強い使用者有利の条件で契約が締結されてしまいますので、労働基準法で制限が課せられています。

”ありかた”を見直す

人材教育・企業風土コンサルティング

弊社のグループ会社である、アイプラスHRコンサルティング株式会社では、「自社らしさ」を見つけ、継続的な成長を目指す。ポストコロナの時代に添ったコンサルティングを提供しています。