退職証明とは、(1)従業員が退職し、(2)従業員が請求したときに、働いた期間や退職の理由などを証明する書類で、労働基準法第22条で交付が義務付けられています。退職証明書には使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならないとされています。なお、労働者が請求した内容以外は記載してはならないとされています。ちなみに、失業保険の際に交付される離職票とは異なる書類です。


5年前に退職した従業員から、退職証明書の発行を要求されています。

はじめての退職者であったので、「そういう証明書は発行できないし、離職票は送ったじゃないか?」と答えたました。
そうしたら、退職した従業員から「法律で発行する義務があるのだから、当然に会社は発行しなければならない」と言われました。

ただ、1通程度なら構わないのですが、「面接のたびに退職証明書が必要だ」と言って、2日1回は証明書の発行を請求してきています。
対応するため、業務にも支障があるし、郵送代や発行のための人件費も馬鹿になりません。

そもそも、退職証明書は発行しなければならないものなのでしょうか?
また、請求がある限り、永遠に無料で発行しなければならないのでしょうか?
同じノリで、源泉徴収票の発行も毎度言ってきており、本当に困っております。嫌がらせと分かっているので、何とかならないでしょうか?

A:退職証明書は2年間は請求がある限り発行しなければなりません。しかし、必ずしも無償で発行する義務はありません

そもそも退職証明書とはなにか

退職証明とは、(1)従業員が退職し、(2)従業員が請求したときに、働いた期間や退職の理由などを証明する書類です。この退職証明は労働基準法で交付が義務付けられています。

退職時等の証明

第二十二条 労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。

② 労働者が、第二十条第一項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しない。

③ 前二項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。

④ 使用者は、あらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、又は第一項及び第二項の証明書に秘密の記号を記入してはならない。

そもそも「解雇と退職」とは?

「退職」とは会社と従業員の雇用契約を終了させることで、「解雇」とは会社側が一方的に雇用契約を終了させることです。この記事では「退職と解雇」について、労働基準法などでどのような定めがあり、労務管理で配慮しなければならないのか、解雇するときの手続き、解雇が制限されるケースなどについて説明していきます。

いわゆる失業保険をもらうための「離職票」は、雇用保険法の世界の話であり、離職票とは別に、労働基準法を根拠に退職証明書を発行しなければなりません。

しかし、40年たったころに退職証明の発行を請求されても、人事データなど残っていない訳ですから、この場合はどうするの?となります。

退職証明の発行義務の期限

退職証明書の請求権の時効は2年となります。(労基法115条/基発169号)

今回のケースですと、5年経過しても請求しているとのことですので、請求権の時効が過ぎているため、請求に応じる必要はありません。

ちなみに、労働者名簿の保管義務は3年になりますので、少なくとも退職証明を発行しなければならない期間は、人事情報は残っているはずですので「データが無い」ということは理論上あり得ません。

退職時の証明は「退職時の証明を求める回数については制限はない。」(平成11.3.31 基発169号)とあるので、2年以内であれば何度でも請求することはできますし、請求を拒否することはできません。

しかし、費用については、行政通達を含め、有償・無償の記載は一切書かれていません。そのため、無償でなければならない義務はありませんので、有償であっても即座に法違反とはなりません。
労働基準監督署は法に違反しているか否かで判断をするので、法律や通達明示されていない以上、有償であることを理由に是正勧告・指導はすることはないようです。

明記が無い以上、有償という選択肢もありますが、1通100万円とするのも、常識的に考えてどうかと思います。この場合は、いわゆる「社会通念上」妥当かどうかで判断することになります。

常識的に考えて、発行手数料が1通100万円ということはNGでしょうし・労働者側が通達を根拠に、毎日1通ずつ2年間請求してきたものを全て無償で発行する ということまで、企業側が義務を負うことはないというのが世間一般の感覚だと思います。いわゆる

源泉徴収票の再発行、再々発行は有償とできるのか?

法律上、発行義務は1通(無償)となっており、2通目以降は特に定めていないため、会社の規定で有償と定めて問題はないと考えて支障ないでしょう。印刷代・手間賃等、合理的な金額であれば良いかと思います。

ちなみに、公安委員会の運転記録証明書は、1通670円、大学の各種証明書は(慶応義塾:1通500円、中央大学:1通300円)となっています。

「条文に書いていないから分からない」と判断に迷ったときは、、、

周囲に関連する条文や他の制度はどうなっているかから推測していくのも、経営判断をする際の考え方の一つです。

今回のケースであれば、

  • 労働基準法のコンメンタール(専門書)には、確かに有償とは書いていないのですが、無料が義務とも書いていない
  • 無料と明記しているのは、労働基準法101条の戸籍の無料証明がある。
    つまり、無料を推奨する場合、労働基準法は積極的に労働基準法の条文で無償の旨を明記している。
  • 発行義務の有無が基準で、有償/無償となるなら、所得税法の源泉徴収票も全て無償であるのが法のバランスとなるのではないか?

となり、用紙代や事務手数料も含めて無償でなければならなくても、良いのではないか?と問いが立ちます。そうなると、社会通念上(世間の常識的な感覚では)どうなのか?と考えていくのがポイントです。

そもそも「解雇と退職」とは?

法律の”そもそも”に立ち返る

「退職」とは会社と従業員の雇用契約を終了させることで、「解雇」とは会社側が一方的に雇用契約を終了させることです。この記事では「退職と解雇」についてどのようなことを配慮しなければならないのでしょうか?

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