政府の要請に応じて、休業をしたり、時短営業にともない従業員が勤務時間よりも短い時間での勤務となった場合、従業員の休業手当はどこまで支払わなければならないのでしょうか。また、政府からの「要請」の場合、「使用者の責」には当たらないと思うのですが、どうなのでしょうか?

また、仕方ないと協力してくれる社員がいるなかで、ゴネ得の社員を作ると、緊急事態宣言解除後の職場の人間関係に傷がついてしまいます。どうすれば、ゴネ得とならないようにすることができるのでしょうか?

A:「要請」は「お願い」。「お願い」である以上、会社が強制的に休ませた場合は、使用者の責となると考えるのが妥当


政府からの内容が「命令」ではなく「お願い」である以上、会社が強制的に休ませた場合は、使用者の責となると考えるのが妥当と思います。

国から感染症法や緊急事態宣言にもとづき、強制力の伴う「指示」や「命令」が出たとき

国から感染症法や緊急事態宣言にもとづき、強制力の伴う「指示」や「命令」が出たときは、使用者の責にはならないと考えます。仮に政府から命令が出たにもかかわらず、会社に賃金の支払の責任が残ってしまった場合は、飲食店チェーンの例のように、政府に対して損害賠償請求などを考えることになりますが、この先は訴訟の世界になります。

とはいっても、会社だけが割を食うのも、釈然としませんし納得できない話ですので、会社の一方的な都合で休ませた場合に、休業手当の概念が出てきますので、労使で合意して、勤務時間を短くしたという形にもっていくことになります。

厚労省のページでは何と書いているか

残念ながら厚労省のページでは、コロナの要請での休業の場合、政府が補償するとは書いておらず、「休業手当を払うか不利益を回避するよう労使で話し合ってください」と書いています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html#Q4-5

対応の流れ

手順としては、
・国からの要請と同じように、従業員に対して時短勤務を「要請」する。従業員から合意をいただいた場合は、時短勤務をお願いして完了になります。

・拒否された場合は、他の仕事をあてがう方法を考えましょう。飲食店の場合「店舗」、劇場などの場合「施設」を要請に従って閉店しているので、会社として他の仕事をあてがうことになります。しかし、そもそも仕事がないので、勤務地や職務内容は、本人の希望に添うものでなくても致し方ないと考えます。

あてがった仕事で合意いただければ、合意した職務についていただくことになります。

しかし、それすらも、拒否をされた場合は雇用契約書に立ち返り、業務内容に
(1)「その他事業運営に必要な業務に従事させる」とあれば、命令違反として処分
(2)「その他事業運営に必要な業務に従事させる」となければ、その仕事しかないので、休業手当を支給→雇用調整助成金の申請という流れになります

やり取りの記録は残しておこう

従業員との経緯は記録に残しておきましょう。×を付けることが目的ではなく、お互にきちんと労働条件をすり合わせるために必要な事実として記録します。

契約更新の際には「同じようなケースがあった場合に、次はどうするのか?」はきちんと話し合い、どのような雇用条件とし、それに対してどの程度の賃金を支払うのか話し合う。という流れになります。

また、職場で問題が発生したときに、同僚・上司とどのように力を合わせ立ち向かっていったのかという視点でも、人事考課においても考慮しておきましょう。もちろん、人それぞれ事情があるので、白か黒の話や感情的なものではなく、どの程度、建設的な提案や行動が出来たかの視点で記録を残していきましょう。

そもそも「賃金」の原則とは?

法律の”そもそも”に立ち返る

「賃金」にも計算のしかたから支払いまで、様々なルールがあります。この記事では「賃金」について、労働基準法などでどのような定めがあり、労務管理で配慮しなければならないのでしょうか?

職場の問題が解決しない

「やりかた」の前に「ありかた」

労働トラブルの発生や、あるべき姿が定まらない原因は「根本の考え方が揃っていない」ことも理由の一つです。これまでの経験や判断を振り返り、これからの自社/部門のあるべき姿を発見・共有する職場学習型の研修をご存知ですか?