「働き方改革」との名のもとに、副業・兼業が話題になっています。もし社員が副業をしたいと従業員から申し出があった場合、会社として認めるか否か頭を抱えています。副業を考えるにあたって、どのように考えればいいのでしょうか?

「副業解禁」と言われますが、就業時間外の副業を禁止することは、「身体の自由」や「経済活動の自由」の観点から適切ではありません

まず労働基準法や民法には副業を制限するようなものはありませんし、「副業解禁」と言われますが、就業時間外の副業を禁止することは、「身体の自由」や「経済活動の自由」の観点から適切ではありません。

しかし以下の4つの事項に該当する場合は禁止することが可能です。

  • 労務提供上の支障がある場合
  • 企業秘密が漏洩する場合
  • 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
  • 競業により、企業の利益を害する場合

よって副業を許可するか否かは会社の慎重な判断に委ねられています。実際に副業を許可する場合、以下のことを留意しておかなければなりません。

副業をしてもらうにあたっての3つのポイント

労働時間の把握…労働基準法では「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」とされておりますので、副業先での就業時間を把握し長時間労働にならないように配慮することが望ましいです。

ただし、副業先でアルバイトをしていた場合、毎回副業先の会社から出勤簿や賃金台帳を入手するのか?となりますので、毎回労働時間を把握することは現実的に不可能です。

健康管理…長時間労働や不規則な労働による健康障害を防止する為、働き過ぎにならないよう副業の状況もふまえ、時間外・休日労働の免除を行うほか、適切な健康確保措置を実施する必要があります。

雇用契約をしていますので雇用契約にもとづき時間外労働や残業を命じることを妨げることではありません。残業有りの雇用契約にも関わらず、社員が「副業しているので残業できません。」というのは認められません。
会社としては「副業するならば、日常の仕事に支障が無いように健康管理をしてね。」と伝えるのが一般的です。

社会保険の加入…従業員が副業先で社会保険の適用要件に満たしている場合は副業先でも加入義務が発生します。その場合の社会保険料は、自社での賃金と副業先の賃金を合計し、各企業で按分して計算することになります。

副業先で週30時間以上勤務していた場合は、自社も含めて週に60時間勤務していることになりますので、あまりあり得ません。それよりも、自分で株式会社を設立し取締役に就任た場合に該当する可能性があります。

副業を許可するメリット

副業を許可するメリットとしては

  • 別の会社に就き知識や経験を得ることでスキルアップが期待できる
  • 従業員の定着率が上がり優秀な人材の流出を防ぐことができる
  • 社外から得た情報や人脈を取り入れることで事業拡大に繋がる

が挙げられますが、労務管理者としては従業員の副業先における状況の把握・管理もしなくてはならない為、負担が増える事実は否定できません。政府が推進していることもあり、副業をしたいという従業員は今後増えていくと考えられます。開始前に合意書や労働時間の申請方法を定めておく等充分に準備しておく必要がありそうです。

副業・兼業の促進に関するガイドライン

厚生労働省から「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が公開されています。(平成30年1月策定)

副業・兼業の場合における労働時間管理及び健康管理についてルールが明確化されていますので。「副業・兼業の促進に関するガイドライン」も参照しながら制度を整備していくことが必要です。

「副業・兼業の促進に関するガイドライン」

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_13266.html

そもそも「採用・労働契約」とは?

法律の”そもそも”に立ち返る

「労働契約」は本来どのような契約を結んでも自由であることが原則です。しかし、制限がない場合は、相対的に立場の強い使用者有利の条件で契約が締結されてしまいますので、労働基準法で制限が課せられています。

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