従業員に対して、労働条件通知書で、何らかの損害を出した場合に対する、違約金又は損害賠償金の上限など定めることはできるのでしょうか?また、身元保証人に対しても同じことはできるのでしょうか?

民法改正で「賠償額に上限が必要」と聞きましたので、賠償額の上限を設定しなければならない気がしています。
賠償額を設定する場合は、雇用契約書や、身元保証書に上限金額等の記入も必要になると思うのですが、相場としてどのくらいなのでしょうか?

「従業員」と「身元保証人」で対応は異なる

従業員に対して、損害賠償の予定は設定できません

従業員に対して、労働条件通知書等で、違約金又は損害賠償金の上限などを求めることはできません。

「賠償の予定」は労働基準法第16条で、賠償の予定は禁止されていますので、採用の時点で賠償額の金額を設定することはできません。

賠償予定の禁止(第16条)「使用者は, 労働契約の不履行について違約金を 定め, 又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」

そもそも「採用・労働契約」とは?

「労働契約」について、労働基準法などでどのような定めがあり、労務管理で配慮しなければならないのか、採用時の手続き、契約内容に関する制限などについて説明していきます。

しかし、まったく賠償が出来ないのではなく、実際に問題が発生したのちに、賠償をすべき事案かを判断し、必要となった場合に賠償額を計算して請求することになります。
ちなみに、仕事をしている上で、食器を割った、うっかり社用車のバンパーを擦ってしまった、というような業務上起こりうることについては損害賠償を請求することはできません。

身元保証人に対しては、損害賠償額の上限を設定しなければなりません

身元保証人に対しては、反対に賠償の上限額を決めなければなりません。
(民法第465条の2、第465条の4~第465条の6)

金額の上限については決まりはありません。しかし、無制限に損害賠償を請求できるものではありませんので、

  • 保証人として支払える常識的な金額
  • これまでに自社で損害が発生し、社員に損害賠償しようと考えた最高額

など、客観的に見て(もしくは自分が保証人となって、損害を請求された場合の心情を見て)、これくらいが常識だろうという金額が妥当と考えます。


もちろん、上限の設定に制限はありませんので損害賠償額の設定を、10億円としても構いません。しかし、現実的には身元保証人にまで損害賠償請求することは非常に難しいですので、せいぜい数百万くらいで、無理を家財を売って弁償する金額程度かと思います。

そもそも「採用・労働契約」とは?

法律の”そもそも”に立ち返る

「労働契約」は本来どのような契約を結んでも自由であることが原則です。しかし、制限がない場合は、相対的に立場の強い使用者有利の条件で契約が締結されてしまいますので、労働基準法で制限が課せられています。

職場の問題が解決しない

「やりかた」の前に「ありかた」

労働トラブルの発生や、あるべき姿が定まらない原因は「根本の考え方が揃っていない」ことも理由の一つです。これまでの経験や判断を振り返り、これからの自社/部門のあるべき姿を発見・共有する職場学習をご存知ですか?