Q:1日8時間を超える勤務を前提とした雇用契約を締結することは可能なのでしょうか?
当社は、どうしても1日9時間の勤務が必要であり、雇入れの際に9時間勤務を必須とした雇用契約を締結せざるを得ません。一般的には、1日8時間労働と思いますが、1日9時間労働を前提とした、雇用契約を結んでも違法ではないのでしょうか?
A:可能です。雇用契約そのものに、労働時間の上限規制はありません
雇用契約を結ぶ際に、1日の労働時間の上限に関する制限はありません。
契約は「契約自由の原則」と言い、基本は個人(会社)対個人(労働者)の間で自由に決めて良いのが原則です。
ただし、契約は「自由であること」に加えて、「対等であること」も求められます。
一般的に、雇う側の会社の方が立場が強く、労使間は対等ではなくなりがちなので、労働契約法や労働基準法といった会社側に制限を掛ける法律が用意され、労使が対等に契約できるようバランスをとっています。
ですので、雇用契約に1日の上限時間の制限を法律がしていない限りは、どのような契約を結んでも構いません。1日9時間勤務を条件とするような、1日の法定労働時間を超えた雇用契約を締結すること自体は問題がありません。
ただし、8時間を超える労働をするためには手続きが必要
ただし、8時間を超えて働いてもらう場合は、以下の手続きが必要になります。
- 就業規則/雇用契約に時間外労働をさせる旨を明示する
- 36協定を締結している
- 時間外労働については割増賃金を支給する
1.就業規則/雇用契約に時間外労働をさせる旨を明示する
雇用契約は、「労働者が労働力を提供し、それに対して会社が賃金を支払う」という約束ごとです。約束である以上、会社が8時間を超えて働かせることを明示しており、働く本人も8時間を超えて働くことを知っていることが必要です。
そのため、雇用契約書や就業規則に、時間外労働があることが書かれていることが前提になります。
2.36協定(時間外、休日労働に関する協定届)を締結している
法定労働時間(1日8時間)を超えて働かせる場合は、36協定(時間外、休日労働に関する協定届)を締結している必要があります。
雇用契約で1日8時間を超える雇用契約を締結していても、36協定が締結されていない場合は、雇用契約自体は有効ですが、1日8時間を超える労働をさせることができません。
3.時間外労働については割増賃金を支給する
当然ですが、雇用契約は労働した時間に対して賃金が支払われます。9時間勤務必須というような、1日8時間を超える雇用契約を締結していても、8時間を超えた時間については割増賃金を支払わなければなりません。
「1日9時間勤務、月給○円」という1時間の残業代を込みで雇用契約書を締結しているのであれば、法律上の義務はありませんが、あとで揉めないように「1日8時間の部分」と「割増賃金の部分」は書き分けて表記しておくことが望ましいでしょう。