Q:当社としてはじめてアルバイトの採用をすることになりました。採用は1名を予定していますが「アルバイト就業規則」のような規程の作成は法的に必要でしょうか?
新規に規程を作成するとなると負担が重たいのですが、既存の就業規則を代用することは可能でしょうか?
ちなみに、アルバイトの労働条件は、
・週3日勤務
・始業時刻10:00、終業時刻16:00の実働5時間、うち休憩は1時間
を予定しています。アルバイト採用の注意点等含め教えていただけると助かります。
アルバイト用の規程作成は必須ではない
A:通常の従業員とアルバイトの間で処遇の条件が全く異なる場合は、
- 雇用契約書に個別に記載し、正社員用の就業規則は適用しないと書く。
- アルバイト用の就業規則を別個で作る。
のいずれかを選択することになります。
アルバイト定期的に採用するのであれば、アルバイト就業規則を作成する方法をおすすめします。しかし、今回のみの採用など将来的にアルバイトを継続して雇用する予定がないのであれば、わざわざ規程を作成するとなると、作成やメンテナンスの手間がかかってしまいます。
もちろん、丁寧に規程を作成していくに越したことはありませんが、対象者が1名しかいないにも関わらず、別個に規程を作っていくことが必ずしも効率的とは限りません。
こういった場合は、就業規則の本則に別紙などをつくり、
「第●条、第●条に・・・ついては、アルバイトには適用しない」と書いておく方がが簡便かと考えます。
アルバイトの雇用に関する「うっかりミス」
ありがちな、うっかりミスとして、
- 就業規則本則で、就業規則の対象者の明示が漏れていた。
- 従業員用の雇用契約書(労働条件通知書)のひな型を流用して、アルバイト用の雇用契約書を作ってしまったので、「詳細の労働条件は就業規則に明記する」などという項目を削除し忘れてしまった。
そのため、アルバイトにも正社員用の就業規則が理論上適用されてしまい、揉めてしまった。
など笑えないケースも、無きにしもあらずです。
例えば「慶弔休暇は正社員にしか認めない」など、正社員とアルバイトで処遇に差があるならば、アルバイトの処遇は何処までなのか就業規則で明示しておきましょう。(1つの就業規則で対象外を明記する。アルバイト用の就業規則を作成する。のいずれでも構いません。)
採用時の明示事項は通常と異なる
ちなみに、採用にあたっては、改正パートタイム労働法(平成27年4月に施行)により、以下の点が義務づけられています。
- 雇入れ時や、短時間労働者が求めた場合に、待遇決定について考慮した事項について説明すること
- 短時間労働者からの苦情を含めた相談に応じ、適正に対応するための「相談窓口」を設置すること(パート法16条)。
- 相談窓口を周知するために、雇入れ時に文書等の交付により明示しなければならないこと(パート則2条)。
3点目は文書交付が必要ですので、正社員用の労働条件通知書をそのまま流用するだけでは、法的には十分ではないことも注意が必要です。項目を追加するか、別紙を用意するといった方法で対応していきましょう。
ちなみに、上記の明示事項の他に、「昇給の有無」「賞与の有無」「退職手当の有無」も明示する必要があります。
休憩時間も注意
今回のケースでは6時間の拘束のうち、労働時間5時間、休憩1時間となっています。休憩時間は、
- ”労働時間が、6時間を”超える”場合は45分
- ”労働時間が、8時間を”超える”場合は1時間
の休憩付与が義務付けられています(労働基準法第34条)ので、今回のケースでは法定以上の休憩を与えていることになります。
もちろん、休憩時間を法定以上に与えることは全く問題ありませんが、休憩時間の付与の基準は「拘束時間が6時間を超える場合」ではなく「労働時間が6時間を超える場合」であることは、把握しておきましょう。
社会保険の適用
今回のケースであると、5時間×3日=週の所定労働時間hは15時間の勤務ですので、雇用保険も社会保険(厚生年金保険&健康保険)の加入(資格取得と言います)は不要になります。
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