Q:4月1日付で入社を予定していた方がいますが、4月10日まで初出勤が出来ていません。3月中に労働条件の提示も済ませており、初出勤を待つばかりの状況でした。
しかし、入社直前にご本人が「他の会社と迷っているため、出社できない。」との連絡があり、本日に至っています。弊社としては、入社をして頂きたい人材ではありましたが、上記のような事情から採用をお断りしたいと考えています。
このような場合、社内の事務手続きや、ご本人への通知等について、どのような手順になるでしょうか?
内定辞退 or 無断欠勤
A:原則としては労働条件を通知しており「初出勤を待つばかりの状況」とありますので、4/1に出社していないのであれば、
- 雇用契約は成立しており、4月1日から無断欠勤(労働者側の雇用契約の債務不履行)
- 会社側が労働条件を提示したが、労働者側が承諾しておらず雇用契約そのものが成立していない。
のいずれかになります。
ご質問の内容を踏まえると「他の会社と迷っている」とありますので、労働者側が、会社の雇用契約の申し入れを承諾していない状態であると考えるのが妥当でしょう。
承諾の連絡の期限を伝えておく
常識的には、4/1までに内定辞退をするか、入社日の調整の連絡があると思いますので、今回のケースは想定外のケースだったのだと思います。
今後は、労働条件通知書や雇用契約書を交付するときに、入社の意思は○月○日までに、担当の○○まで連絡をくださいと伝えておくようにしておきましょう。
実務では初出社日に出社しなかったら「内定辞退」
さて、正論でそうは言っても、これまで前述ような仕組みが無かったのですから仕方ありません。こういった状態であれば、実務としては、
4/1の時点で出社していないのですから、内定を辞退されたと考えて、内定辞退と判断した旨を本人に通知し処理していくのが良いでしょう。
連絡がなければ、通知もせずに処理をしても良いかもしれませんが、今回のケースでは本人と連絡が取れており、会社は「迷っている」旨を本人から聞いてしまっています。
すでに採用する意思は会社にはありませんし、既に4月10日になっていますので、なおさら「4月1日時点で辞退していると判断して処理をしており、入社日の延期は認めない」と通知してくことになります。
意思を待つことは本当に良いことなのか?
今回は採用の意思が無くなっていますが、仮に延期を認めるか、門前払いは忍びないと思うのあれば、回答期限を伝えることをしても構いません。
しかし、回答期限を延期をし、結果貴社に入社するとしたとしても、それは「貴社に入社したかったではなく、もう一社よりマシだった。」ということで「本当に自社のことを気に入って入社した」のではありませんし、残念ながら出社日までに入社の意思を決められない人物です。
入社日を延期をして入社いただいたとしても、入社後にも同じように「期限までに決められない」「自分の行為の影響が分からない」「他の人に迷惑を掛けていることを想像することが苦手」など、問題行動を起こす可能性は否定できないため、しばらくは日々の仕事ぶりは確認し、問題行動については指導していくことが必要になると考えられます。
繰り返しますが、今後は、労働条件通知書や雇用契約書を交付するときに、入社の意思は○月○日までに、担当の○○まで連絡をくださいと伝えておくようにしておきましょう。
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