コラム・レポート

2020-12-15

どうすれば賃金体系が「”より”年俸っぽくなる」のか?

スタッフコラム 人事制度&賃金制度

企業様より「年俸制を導入したい」という相談を受けることがあります。
日本の場合は、時間外労働や深夜労働に対する賃金を、都度計算して支給しなければなりませんので、業務委託(準委任契約や請負契約)でない限り完全な年俸制は実現できません。

「そうはいっても、年俸にしたい!」というご要望に一歩でも近づけるために、
「”より”年俸っぽくなる」賃金制度を設計するにはどうすれば良いか考えてみました。

変動給は一切入れない。理想は基本給1本

歩合給や指名手当など「単価×回数」で出来ている手当を作ってしまうと、毎月の支給額が変わります。
 役職手当も年の途中に昇進昇格があると、金額が変わってしまいますので、基本は「基本給のみ」で作ることになります。
 もちろん、不利益変更しにくくなりますので「基本給」ではなく、年に1回、役割を見直し洗替えするルールにした「役割給一本」となると思います。

昇降給は年1回で4月

ザックリですが、固定的賃金が変動した場合は、社会保険料が変わることがあります(月額変更や随時改定と言います)が発生します。
 「”より”年俸っぽくする」には随時改定を発生しないようにする必要がありますので、年に1回必ず行う定時決定(算定と言います)だけで済むように昇給のタイミングは4月の1回のみが良いでしょう。

もちろん定額残業手当は導入する

時間外と深夜時間、休日労働は稼働した時間に対して賃金を支払わなければなりません。「”より”年俸っぽくする」場合、残業時間の計算が発生しないほど、定額残業代を設定しておく必要があります。
 

休日労働、深夜勤務についても定額手当

さらに言うと深夜労働(22時始業など時間外労働でなくても発生する)や休日労働(割増率が異なる)は通常の定額残業代では賄いきれませんので、深夜と休日労働に対しても定額勤務手当を作っておくと、「”より”年俸っぽく」なります。

賞与は支給しない

年俸ですので賞与は支給しません。
業績に応じた成果の再配分の機能や、総額人件費の調整弁として賞与は機能させるものですが、「”より”年俸っぽくなる」に特化するのであれば、賞与は支給できなくなります。

完全月給制

年俸制ですので、完全月給制とし欠勤控除をしないことになります。
「働いてないのに給料を払うのは違和感を感じる」と思われるかたもいると思いますが、年俸制のプロ野球選手がケガで試合を欠場しても、欠勤控除はされませんよね。

通勤定期券も支給しない

「”より”年俸っぽくなる」ことを目的とするならば、転居による変動の要素を伴う、通勤定期券や通勤手当も支給できません。世間一般の常識として通勤手当が当たり前に支払われるよう感じられますが、実は「通勤交通費を支給しなければならない」という法律はありません。

経費精算や賃金控除も無し

「”より”年俸っぽくなる」ことが目的ですので、経費の精算や社員食堂の食事代の控除は行えません。会社で必要な備品は会社が購入をし、会社にありがちな食事代や親睦会費は別途精算してもらいましょう。 

年俸制を入れる前に考えて欲しいこと

賃金や賞与といった報酬制度は、「どう頑張れば、給料が上がるのか?」「どう頑張って欲しいのか?」を伝える強いメッセージになります。
年俸の導入をすること自体は否定しませんが、「何となく10%アップ」とするのではなく、「なぜ、この年俸額になるのか?」「どのようなロジックで年俸が決まるのか」を説明できるようにし、社員の納得感をえられ、会社が求める働きかたを促す取り組みも併せて実施していきましょう。

※ちなみに、マニアックですが業務委託の場合は、雇用契約を締結した労働者ではありませんので、支払われる金銭は、雇用契約にもとづく労働の対価として支払われる「賃金」ではありませんので、「賃金」と呼べません。「報酬」と呼ぶことも注意しましょう。


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