コラム・レポート

2016-12-20

社会保険労務士は全国に何人いるのか?

民間調査機関の公表情報 社会保険労務士

「社会保険労務士って、全国にどれくらいいるの?」と時々聞かれるので、近年の会員数を調べてみました。

全国と東京都の開業会員・勤務会員・法人会員の会員数それぞれで傾向を見てみたところ、いくつかの特長がみられます。

社会保険労務士会員数および法人会員数(全国の人数)

全国の社会保険労務士の会員数は、2023年12月末時点で45,624名おり、そのうち個人事業主として独立している社会保険労務士である、開業という区分は24,694名、社労士法人との代表として登録している会員である法人会員は3,851名、企業に勤務している、もしくはそれ以外の会員である区分の勤務等は17,079名となっていました。

開業の会員は6年で1,000名程度しか増加していませんが、法人会員は2倍以上に増えています。

開業法人勤務等合計
2015年12月23,6711,48715,13440,292
2016年12月23,6931,84515,12440,662
2017年12月23,8222,16215,26041,244
2018年12月24,0322,43115,66742,130
2019年12月24,2502,68815,98042,918
2020年12月24,5423,92016,13244,594
2021年12月24,6303,24216,48244,354
2022年12月24,6963,57916,78645,151
2023年12月24,6943,85117,07945,624
全国の社会保険労務士の人数(会報より。ただし2020年12月の法人数は誤字の可能性あり)

社会保険労務士会員数および法人会員数(東京都の人数)

次は東京都に社会保険労務士会に登録している社会保険労務士は、2023年12月末時点で11,838名おり、そのうち開業会員は4,369名法人会員は1,170名勤務等会員は6,229名となっていました。

開業法人勤務等合計
2015年12月4,0115045,2339,748
2016年12月4,0286075,3249,959
2017年12月4,0777115,41410,202
2018年12月4,1417935,61210,546
2019年12月4,1988635,73110,792
2020年12月4,2659325,83011,027
2021年12月4,3011,0135,99111,305
2022年12月4,3741,1026,17911,655
2023年12月4,3691,1706,22911,838
東京都社会保険労務士会に所属する社会保険労務士の人数

出典は全国社会保険労務士会連合会および、東京都社会保険労務士会が発行する会報です。

開業(個人事務所)と法人とで、東京一極集中の傾向は微妙に異なる

全国のデータを踏まえると、開業会員は全体の約1/6、法人会員は約1/3、勤務等も約1/3強が東京都の社会保険労務士会に所属していることになります。

登録区分別の社会保険労務士の登録者数(全国&東京)

「東京の勤務登録者数 > 全国の法人会員数」となっているのが特徴ですね。大規模な社労士事務所や、企業の人事機能は都内に集中しており、個人事業としての社労士事務所は法人事務所よりかは比較的各地に分散しているようなので、企業の本社所在地の分布と、相関関係はありそうですね。

登録者数は常に微増傾向。合格者数と比較すると…

社会保険労務士試験は年によって合格者数は異なりますが、毎年2,000名から3,000名程度合格しています。(4,000人を超える年もあれば、1,000人程度の年もあります。)

しかし、グラフを見ると横ばい感があることは否めません。全国レベルでの会員数の増減を見てみると、法人の会員は増えていますが、開業や勤務はわずかしか増えていないのが特徴です。

15年12月末を1.0とした場合の、2021年12月末の推移

2015年12月末を1.0とした場合、2021年12月末までに開業・法人・勤務等の登録人数(全国・東京)がどの程度増えたのかを指数化してみました。ご覧のとおり全国・東京ともに法人登録が2倍に増加しています。

一方で、開業・勤務は1.04(開業・全国)、1.14(勤務・東京)と2015年から比較しても、10%程度しか増えていません

15年12月末を1.00とした場合の区分別の会員数の変化
15年12月末を1.00とした場合の区分別の会員数の変化(法人含む)

開業・勤務登録の増加状況は?~実は全国の開業登録は増えていない

法人会員の伸びが顕著ですが、開業・勤務登録はどの程度増えているのか見てみましょう。
※上のグラフでは、開業と勤務の伸び率が良く分からないので、開業と勤務だけでグラフを作ってみました。

2015年12月と2021年12月末を比較すると、勤務登録は全国・東京ともに10%程度増えていますが、全国レベルでみると開業登録は伸び悩んでいます。特に、全国の開業登録数は、4%しか伸びていないのも特徴です。

15年12月末を1.00とした場合の区分別の会員数の変化(法人除く)

試験に合格して会員登録をしている人が、そもそも少ないのか、あらたに登録の人数と同じ程度、退会する人数がいるのか分かりませんが、あまり増えていないのが特徴です。

3月末は毎年会員数が減少する

資料では毎年12月末時点のデータを示しましたが、いずれの年も3月31日時点は、必ず前月より人数が少なくなるのも特徴です。会費が「年払い」もしくは「半期払い」なので、期中で会費を清算せず年度末の時点で退会する方が多いのだと考えられます。

当月会員数-前月会員数(全国の開業・法人・勤務)

単純平均すると開業社労士1名あたり、何件の企業を担当しているのか?

2016年(平成28年) 10月10日現在の市区町村数(特別区含む)が1,741市区町村なので、1つの市区町村あたりの開業社会保険労務士は13.6人(23,651人÷1,741市区町村)くらいいるという規模感になりますね。

「平成26年経済センサス基礎調査」によると、全国で4,098,284社東京都のみで477,077社あるそうです。
仮にすべての企業が社労士に委託していたとるすると、1社労士事務所当たりの企業数は、

全国の場合、4,098,284社÷(開業社労士23,651事務所+主たる法人891社)= 166.9社
東京の場合、477,077社÷(開業社労士4,019事務所+法人595社)= 103.4社

になるようです。

また、開業社労士の2割、社労士法人の4割が東京に集中していることも特徴ですね。

(おまけ)人口密度で見てみると、どの程度社労士はいるのか?

ちなみに、日本の面積は378,000 km²なので、人口密度としては、23,651人÷378,000 km²=0.062人/km²となります。
比較の意味は全くありませんが、世界で2番目に人口密度が低いスバールバル諸島・ヤンマイエン島(ノルウェーの領土です)の0.04人/km(人口:2,630人、面積:62,422km²)より、日本の国土面積に対する開業社労士の人口密度の方が高く、3番目のフォークランド諸島の0.2人/km(人口:3,026人、面積:12,173km²)より人口密度が低いようです。

出典:wikipedia「国の人口密度リスト

人口比ではなく単純な割り算ですので、実際は都市部と市区町村で偏りがあると思います。
また、実際には開業登録をしているが活動はしていない開業社労士もいると思いますので、一概には言えませんが、あくまでも参考程度に見てください。
時間に余裕があれば、「東京や大阪に偏っているのじゃないの?」や「時系列ではどうなっているの?」といった切り口で会員数も調べてみたいと思います。

ちなみに、会報は社会保険労務士に登録している会員に配布されるものですが、ときどき公民館など公共の施設に置かれていることがあります。


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