アンケート・意識調査票の作り方(3)~設問を作る時のポイント
アセスメント&サーベイ従業員の意識調査サーベイや、採用イベントの来場者アンケート、お客様満足度調査のアセスメントなど、総務人事の仕事をしていると、いろいろなアンケートを作る機会があります。
総務人事をしていると、意外とアンケートや意識調査の作り方について教わることはありません。しかし、アセスメントやアンケートを進める上では、いくつかのポイントや注意点があります。
ここまで実施に向けた企画の話をしてきましたが、アンケートやアセスメントの方向性が決まりましたら、具体的な設問の設計になります。効率的な設問を用意することが腕の見せどころになります。
属性の設定がとにかく重要!
アンケートやアセスメントから意味のあるメッセージを引き出すためには、回答者の属性をしっかりと検討することが大切です。
回答者の属性の例としては、
- 役職(一般、主任、課長、部長など)
- 所属部署(営業課、経理課など)
- 職種(営業など・事務担当、製造担当など)
- 勤務地
- 勤続年数、年齢、現在の部署での勤続年数
- 性別、家族構成(既婚・未婚など)
- 採用形態(新卒・中途など)、雇用形態(正社員、契約社員、パートなど)
などが考えられます。
これらの属性をきちんと取得していなければ、集計時に「全社平均では満足度は高いが、部署別の不満や、男性と女性での温度差が分からない。」という問題が発生することになります。
「それならば、たくさん属性を聞いとけば良いではないか?」
と、なりますが、多くの情報を確認することは得策とは言い切れません。
回答者の属性を聞けば聞くほど
「鹿児島営業所の、購買課に所属している、20代の、庶務担当の女性」
という具合に、本人が特定できる可能性が高くなります。
匿名回答をしている場合でも、回答者から見れば、回答者属性をたくさん書かせることで、本人を特定しようとしているのではないか?と誤解され、匿名回答の狙いである本音の回答が引き出せなくなる可能性もあります。
選択肢の括りかたにもコツがある
回答者の属性を取得する上で、選択肢の括りかたを検討することも忘れてはいけません。
例えば、年齢という属性であれば、10代、20代、30代と分類しがちです。
しかし、社員の意識調査であれば、22歳から5年や10年刻みで整理していく方が意味を持ったグループを作ることが出来ます。例えば、
- 22歳~31歳:大学を卒業して、社会人として1人前になる期間
- 32歳~41歳:家庭をを持ち始め、会社でも主任や課長といった小組織の長となりはじめる期間
- 42歳~51歳:子供が自立しはじめて、会社でも大きな責任を持つ期間
- 52歳~61歳:子どもが独立し、会社では後継者や後任を育成し、定年に向けて着地していく期間
といったように、社会人としての立場や価値観の変容とフィットした分類とすることができます。このように、どんな括りの層に、どんなこをを聞きたいのかも、アンケート設計時に検討していくことになります。
聞きたいことは多くても設問数は絞る
(回答時間は多くても15分~20分)
例えば、1問30秒で回答していった場合、200問のアンケートであれば、100分(1時間40分)かかることになります。仮に回答時間が半分の15秒であっても、ほぼ1時間かかります。
人間が好きでもないことを行う際に集中力が続く時間はそれほど長くありません。アンケートの設問数が多い場合、回答者は後半の設問になればなるほど、いい加減に回答してきて、正しい回答をもらえなくなります。回答時間についても配慮していきましょう。忙しい中でこたえていただくので、回答者の時間にも配慮しましょう。
設問の構造はMECE(モレなく、ダブりなく)であること
アンケートを作成する際には、聞きたいことを順番に書き出していきたいものです。しかし、思いつくままに設問を設計していると、確認モレが発生する恐れがあります。
たとえば、野球で「今日のゲームに関する評価」という設問であれば、
- 本日の打撃はいかがでしたか?
- 本日の走塁はいかがでしたか?
- 本日の打者で特に印象的な選手は誰でしたか?
という3問だけで今日のゲームについての評価は十分なのでしょうか?
野球は「攻撃」と「守備」に分かれていますが、アンケートでは「攻撃」のみしか扱っていません。もれなく確認するには、「守備」の観点もアンケートに盛り込まなければなりません。
また、「ダブりなく」という観点も意識しなければなりません。
例えば、「好きな犬を1選ぶ」という設問であれば、
- チワワ
- 柴犬
- オスの柴犬
- 犬
とあった場合、オスの柴犬好きの方は、「オスの柴犬」「柴犬」「犬」のいずれも選択できてしまいます。
オスの柴犬好きの人であっても、「犬」を選ぶ可能性もあり、「柴犬」を選ぶ可能性もあります。アンケートを設計する際には、複数の回答を選べてしまうことも避ける必要があります。
目的に応じて設問形式を工夫する
質問の仕方にも、いろいろなパターンがあります。用途にあった手法をうまく使っていきましょう。
リッカート形式(段階形式)
複数段階の選択肢のうち1つを選ばせる方式です。なじみのある選択肢ですので、回答しやすいメリットがある一方、高い得点を付ける傾向があります。
- 非常にそう思う
- そう思う
- どちらでもない
- そう思わない
- 非常にそう思わない
複数選択式
複数の選択肢から選ばせる選択肢になります。優先順位を高い項目を発見することは可能です。
「あなたが、中華料理店になければならないと思うメニューを」以下の選択肢の中から、あてはまるものを3つ選んでください。
- ラーメン
- 麻婆豆腐
- 天津飯
- 回鍋肉
- 酢豚
プロブスト法
複数の選択肢の中から該当する項目を全て選ぶ選択肢になります。選択肢の自由度が高い点は特長ですが、選択肢を網羅的に揃えることが難しいことと、集計や解釈することが難しいという点が問題になります。
自分の性格に当てはまるものすべて選んでください
- 闊達
- おとなしい
- 社交的
- 積極的
- 明朗である
Yes/No形式
「紅茶と日本茶ならば日本茶を選ぶ」(Yes/No)
というように、二者択一を迫る選択肢になります。
YesかNoを迫るためシンプルな設問になりますが、回答者に決断を迫ることになりますし、「日本サッカー界は盛り上がっていると思う」といったような、人によって解釈や捉え方が異なる(=YesかNoの回答にバラつきが異なる)ような設問はYes/No形式にはなじみません。
自由記述形式
いわゆるフリーコメント欄になります。フリーコメント欄自身は、集計することはできませんが、回答内容の背景や設問からは読み取れない定性的な情報を把握するために利用します。
選択肢は5択(奇数)と4択(偶数)がある
アンケートの選択肢を作る時には、選択肢の数も考える必要があります。アンケートの回答と言えば、
- 非常にそう思う
- そう思う
- どちらでもない
- そう思わない
- 非常にそう思わない
このような5つの選択肢をイメージすると思います。
しかし、選択肢にも工夫の余地があります。例えば、選択肢を
- 非常にそう思う
- そう思う
- そう思わない
- 非常にそう思わない
という4択にしてみると、どうでしょうか?
回答者はYesかNoのいずれかの意思表示をしなければならなくなり、「どちらでもない」という回答は出来なくなります。
ただし、アンケートやアセスメントを集計するという観点では、どちらかの意思表示がされる点は有り難いのですが、曖昧が許されなくなるため、回答者の心理的な負担は大きくなります。