コラム・レポート

2015-12-09

職能資格と職務等級

人事制度&賃金制度 動画(YouTube)&事務所通信

「部下無し課長」という言葉がありますが、部下のいない課長が存在することは会社の人事制度として問題があるのでしょうか?

そもそも、課長や部長という名称は人事制度から見た場合は、どのような意味があるのでしょう?

人事の現場で、混同しがちな職能資格等級と職務等級についてお話します。

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労務相談を受けていると「課長なのに部下がいない」、「社内の結構な割合の社員が課長である」、という話をよく伺います。

このように「部下のいない課長がいる」状況や、「課長である社員が結構な割合を占めている」ということが起きている理由は、「職務等級」と「職能資格等級」という2種類の運用に原因があります。
これらの2種類を不明確に運用しているために、「部下のいない課長がたくさんいる」、「課長という肩書の社員が多く存在する」ということが起こりうるのです。


この「職能資格等級」と「職務等級」は何が違うか例を挙げてみていきましょう。
一昔前の軍隊を例にとってご説明すると、「連合艦隊司令長官 山本五十六大将」という表現を例に挙げてみます。

この中に、「山本五十六」という名前以外の部分に注目すると「職務の名前(連合艦隊司令長官)」と「職能資格等級(大将)」という2種類の要素を含んでいます。
ではまず順番に、「職務等級」つまり「職務の名前は何か?」というとことについてです。「連合艦隊司令長官」という役割に関しては、「職務」という識別になります。
「大将」や「中将」という部分に関してが「職能資格等級」ということになります。

「職務等級」というのはわかりやすく表現すると、「椅子の名前」ということです。例えば、「経理課長」、「大阪支店長」というようなポジションに対する名称のことを「職務等級」と表現します。
「職能資格等級」というのは何か?というと先ほど申し上げたとおり、例えば「中尉」や「少佐」、「大佐」、「中将」という「資格」のこと、「ランク」のことを「職能資格等級」と表現します。


最初に申し上げた「課長問題」について話を戻します。
この「課長」という名前が「職務等級」つまり「役割」を示唆しているものなのか、それとも「肩書き」、つまり一般社員から始まり、主任、係長、課長、部長、という「序列」いわゆる、「資格の等級」を示唆しているのか?というのが不明瞭になっているのです。それぞれの会社によって、「職務等級」「職能資格等級」のどちらを示唆するものなのかがバラバラになっていますので、よく分からなくなるということが起こるのです。


先ほどの「連合艦隊司令長官 山本五十六大将」という例に関していえば、「連合艦隊司令長官」という肩書きは「山本五十六」以外の新たな人物が就任した場合にその新たな人物が「大将」ではなくとも「連合艦隊司令長官 〇〇中将」という別の「ランク」であったとしても「連合艦隊司令長官」であることに変わりがありません。
また、ランクが「中将」であるということに関しても特に問題はありません。

さらに言うと、ほかの基地の司令官に就任した場合、例えば「山本五十六」が他の基地の司令官になった場合は、「〇〇基地の司令官山本五十六大将」ということであっても全然問題がないのです。


冒頭に出てきました「部下のいない課長」がたくさん在籍している。というケースの場合は、この会社は「部下がいない」状況であってもその肩書きに対しては、「課長」というのは、先ほどの例に出ている軍隊風に言うと「中佐」や、「大将」である「ランク」「資格」という扱いで「課長」と表現している。と考えられます。
つまり、「中佐」や「大尉」という人物が多数存在している状況に対して「特に問題ない」と言っている事と同じです。
このように「課長」を「職能資格等級」と考えている場合は、「部下のいない課長」が存在することは当然といえる状況です。

一方で、「課長」という名称が「職務等級」である場合は例えば、「経理課長」、「人事課長」、「営業課長」というような「職務」と関連する名称が考えられます。
その社員が、「課長」という職務を解かれた場合はその「課長」という名称の使用を停止する。「課長」ではなくなっている。ということをご理解頂ければと思います。


昔の人事制度では「職能資格等級」や「職務等級」というものは特に区別せず、ほぼ全員が経験とともに肩書きがつき、役職がついていく、という仕組みが多かったので区別なく運用していても、特に問題はありませんでした。
しかし昨今の場合だと、「職能資格等級」が上がったとしても必ず「ポジション」「ポスト」に就任する。という状況ではないことが起こるのです。
ご自身の会社が「課長」という名称を「職能資格等級」のひとつの「等級」の名称として運用されているのか、それとも、実際の職務、つまり「椅子の名前」としての「課長」と呼んでいるのか、ということを厳格に運用、管理していくことが重要です。

「そろそろあの人も課長だから・・」と言う場合、その「課長」は「職務」のことを示唆しているのか、「資格」のことを示唆しているのか、ということをしっかりと意識をして考えて頂ければと思います。

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