紛らわしい、改正「育児介護休業法」
法改正 厚生労働省の公表情報第204回通常国会で育児・介護休業法の改正が決まりました。厚生労働省からもリーフレットがでていますが、誤解しやすい内容なので解説します。
●令和3年改正法の概要
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000788616.pdf
●リーフレット「育児・介護休業法改正ポイントのご案内」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000789715.pdf
■今回の改正は2つに分かれている
分かりにくいのですが、今回の改正は
【1】出産から8週以内 :「出生時育児休業」の新設
【2】出産から8週目を超えてから:「育児・介護休業法」の改正
の2つに分かれて考えます。
■育児休業は出産8週目を超えてから取得する発想
「子が1歳に達するまでの間に取得することができる(第5条1項)」とあるので
- 男性は配偶者の出産日から取得可能で、
- 女性は8週目を超えてから取得可能(産後休業期間(出産日の翌日から8週間)が優先される)
となります。ですので前述の「【1】出産から8週以内に影響する内容」の部分は
「実質的に男性を対象とした改正」になります。
もちろん、男性に限らず取得可能ですが、理論上は女性が取得できるのは、女性が養子縁組をした場合などに限られてしまいます。
「出生時育児休業の”新設”」とあるので、出生時から男性は育児休業をとれるんじゃない?と思いますが、この辺も紛らわしい原因のようです。
■【1】出産から8週以内に影響する内容
出産から8週以内に影響する内容「出生時育児休業」の内容は
- 申出期間の変更 ←1か月前だったものが、2週間前までに申出可能
- 2回の分割取得可能 ←8週間のうちの4週間を分割するという意味
- 休業中の就業が可能 ←8週間までの期間に限る
となっています。繰り返しますが、
この3つの制度は出生時育児休業(出産から8週間まで)に限定した制度
となります。この制度が従来の育児休業の範囲には影響が及ぶことはありませんので、1歳6か月になるまで休業中に就業が可能という訳ではないということも誤解しないようにしましょう。
なお、休業中の就業ですが、まだQ&Aなどが出ておらず、詳細は決まっていません。(21年6月25日時点)
ちなみに、「休業中の就業が可能」とありますが、
「1日おきに取得すると実質は分割取得。でも一方で、”分割取得は2回まで”と決まっている」ので、どのように休業中の就業ができるのかは注意が必要です。
■【2】出産から8週目を超えてから:「育児・介護休業法」の改正の内容
①有期雇用労働者に係る育児休業・介護休業の申出要件の見直し
いままで、有期雇用労働者の育児休業取得には、
- 引き続き雇用された期間が1年以上
- 1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない
の2つの要件がありましたが「引き続き雇用された期間が1年以上」が廃止となりました。
「1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない」という条件はいままでどおりです。
②育児休業等に関して、事業主が講ずべき措置の見直し
- 育児休業を取得しやすい雇用環境の整備(研修、相談窓口設置等)
- 妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置
の2つが義務付けになりました。
③現行の育児休業の見直し(育児休業の分割取得等)
いままでは原則分割することはできませんでしたが、今後は(新制度「出生時育児休業」とは別に)分割して2回まで取得可能になります。
つまり、
8週目までに2回、8週目以降に2回
の合計4回分割取得が出来ます。
また、「1歳以降に育休を延長する場合、育休開始日は1歳、1歳半の時点に限定」されていた点についても、特に起算日を求められなくなります。状況を見てパパとママの育休のタイミングを交代するというのが2回しかなかったのですが、状況に合わせて変更出来るようになりました。
④育児休業の取得の状況の公表
従業員数1,000人超の企業は、育児休業等の取得の状況を公表することが義務付けられます。
公表内容は、男性の「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」と省令で定める予定です。
となっています。
■まとめ
今回の育児介護休業法の改正は、(1)出産後8週目までの話と、(2)8週目を超えた期間の話を分けて考えないと混乱をきたしてくる内容です。今回の改正は大きな改正ですので、「2つに分けて考える」という視点は、人事労務担当者としても、おさえておきたいポイントだと思います。
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