コラム・レポート

2019-07-17

相談料や施術料「10,000円/時間」は高いのか?

スタッフコラム

当社のような形のない相談サービスや、デザイナーさんや、美容師さんのといった無形の技術を売るサービスに対してお見積もりを出すと「高い」と仰る方がいます。
例えば、分かりやすく相談料や施術料を10,000円/1時間とした場合、施術料1時間10,000円は本当に高いのでしょうか?
※以降の内容は分かりやすくするため、大企業と異なり分業の概念がない個人事業主を例にとってお話したいと思います。

1日8時間×20日稼働だと月商160万円?いいえ違います

士業もそうですが、デザイナーや美容師といった技術職で生業を立てている方は、1日中お客様から報酬を頂戴する仕事だけをやっているのではありません。お店のホームページのブログを更新やチラシを配るなど営業活動などをしなければなりませんし、技術職なので、時代に取り残されないよう情報収集や技術の講習会にも参加しなければなりません。

仮に1日の仕事を
・報酬が請求できる時間
・営業のための活動・事務処理
・情報収集や技量向上の時間
・移動時間[片道30分の移動を2件程度]
をそれぞれ25%ずつくらいの割合と仮定し、1年間の労働時間を1,800時間としましょう。
※最近は働き方改革で話題になりにくくなっていますが、平成16年ころには厚労省で「年間総労働時間の目標1,800時間」と掲げられています。

1日の仕事の割合と、年間の総労働時間を踏まえると、お客様から10,000円/時間頂戴したとしても、
1,800時間×25%×10,000円=4,500,000円/年商にしかなりません。

年商と収入の金額は違う

「年収300万円時代と言われて久しいこのご時世に、年間450万円稼げるなら御の字じゃん」と思ってはいけません。
この450万という数字は、給与の額ではなく売上です。
この450万の中から事業の経費を差し引いた残りが、事業主の収入になります。

例えば、美容師さんをイメージしてください。美容師を始めるとしてもハサミ1本で商売ができる訳ではありません。店舗の設備費用や、道具代、シャンプーなどの消耗品の仕入れが必要になりますので、決して安くない費用が発生していきます。

日本人サラリーマンの平均給与は「420万円」ですので、リスクを取って事業を始めた技術職の人の手元に残るおカネが、(前述の前提の場合)450万円から経費を差し引いた額しかないというのも不条理なものですので、技術職の相談料や施術料が10,000円/1時間とあっても決して高い金額ではないのです。

「友達にタダでやってもらった」本当にそれでいいの?

「親友が美容師なので無料で紙を切ってもらった」「デザイナーの親友に無料で似顔絵を描いてもらった」ということをしばしば聞きます。
日本人は、形の見えない技術やサービスに価値を感じにくいという傾向がありますが、売り物になるまでの技量習得に掛けた時間と費用を考えると「友達だからタダ」というのは、あまり好ましくありません。
むしろ親友であるならば「一般のお客さんの倍額を支払った」くらいの気合を見せてあげると友人は喜ぶと思います。

安さを求めるなら「安さなりのサービス」以上を求めてはいけない

冒頭のように、10,000円/1時間が高いということであれば、安さ重視のお店を探せばよいのです、世の中には「価格に挑戦」といって低価格路線をウリにする企業は存在します。
しかし、考えてみてください。客単価を下げて同じかそれ以上の売上を確保するとなると、技術の更新や将来のための時間を犠牲にして稼働率を上げるか、総労働時時間を増やしていくか、単価の安い者を使う方法しかありません。たしかに、いま現在についてはそれで対応できるのかもしれませんが、技術が通用しなくなるか体力が持たなくなる日が見えてきます。また、技術レベルが低い人件費の安い者を使うという選択肢であれば、やはりサービス品質は期待できなくなり、安さには、安さなりの品質とならざるをえません。


一昔前であれば、「安くて良いもの」というのが当たり前だったのかもしれませんが、いまは「値段相応」の時代になっていると思います。

提供側も、提供した価値に対して正々堂々対価を求めなければダメ

もちろん買い手の問題だけでなく、売り手側にも問題がないとは言えません。同業の新人の方の中には「仕事さえもらえれば安くてもかまわない」「自信がないので安い金額で」などということを聞きます。
でも、考えてみてください。自分が盲腸の手術を受けるときに執刀医から「私は経験が浅く自信がないので、今回の手術料は安くしておきます。でも一生懸命対応しますので、よろしくお願いします。」と言われて安心して手術を任せることができるのでしょうか?専門家である以上、必要最低限の仕事をしなければなりませんし、必要最低限の仕事をする以上、必要な対価を請求する義務があると思います。

「”こんなレベルのくせに高い”と言われたらどうしよう。。」というのは、技術職として不合格だと思います。文句を言われないように価格に見合った(もしくはいまの価格以上の対価をもらうために)技術を維持・向上させる研鑽をすれば良いだけです。

「高いと言われる」ことを恐れるということは、自分の技術を否定していることになりますし、自分の技術を否定するということは、自分自身の専門家としての存在意義を否定してしまっていることになります。
専門家である以上、技術を研さんし、技術に誇りを持ち、提供した価値に対して正当な対価を請求することが必要なんだと思います。この姿勢は、自分自身のためだけでなく、士業やデザイナー、美容師といった自分の所属する専門職が、儲かり尊敬される「あこがれの職業」となるためにも必要な姿勢だと思います。

アーカイブ

   

人事のことでお悩みがあればお気軽にご相談ください。

ご相談フォーム
  • アイプラスHRコンサルティング株式会社
  • 労働トラブル「事例と対策」
  • 賃金制度を見直す|社労士事務所の賃金制度改定応援サイト
  • 社会保険労務士個人情報保護事務所 認証番号 第111246号

ページトップヘ