コラム・レポート

2020-04-09

休業補償を行い雇用調整助成金をもらう前に考えて欲しいこと

代表&スタッフコラム 人事制度&賃金制度 求人&雇用&人材育成

非常事態宣言に伴い、政府や都道府県から自粛要請・休業要請が出ています。

「会社が休業した→従業員も休ませなければならない→休業補償(休業手当の支給)→雇用調整助成金をもらおう」という流れになっていますが「雇用調整助成金ありき」で突っ走る前に一度考えて欲しいことがあります。

従業員を休ませる・稼働を減らす方法は「休業命令」だけではない

そもそも、会社(使用者)と従業員(労働者)の間で「雇用契約」という契約を結んでいます。
雇用契約とはザックリいうと、

★従業員(労働者)は
会社と雇用契約で決めた時間だけ会社に拘束され、指揮命令にもとづき労働力を提供する。
その代わりに、会社から賃金をもらう。

★会社(使用者)は
雇用契約で決めた業務内容について、従業員に対して指揮命令権を行使する。
その代わりに、従業員に対して賃金を支払う。

という関係にあります。

 

今回のケースでは、
・従業員側は、雇用契約に定めた時間だけ労働力を提供することができるが、
・会社側は、雇用契約で定めた時間だけ働いてもらう必要が無い。
という状態になっています。

その中で、会社から一方的に
「うちは会社がお休みになったから、会社に来なくていいよ。なので給料はナシだからね。」

というようなことが起きてしまうと、従業員は収入が断たれて生活の手段を失ってしまいます。
そのため、労働基準法では労働者を保護するために、労働基準法第26条(休業手当)という制度があります。

労働基準法 第26条には、
「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。」

となっており、世の中でいう「6割補償」はここから来ています。
巷では「休業すると会社も社員も一安心」のような空気がありますが、労働力を提供してもらっていないにも関わらず、休業手当を支払わなければならないので、会社としては単純な持ち出しをしていることを忘れてはいけません。

 

「助成金がもらえるなら休業でもいいじゃない?」は、ちょっと待って!

この休業手当を支給した際の会社の負担を軽減するために、雇用調整助成金という助成金があり話題になっています。
雇用調整助成金を受給できれば、「会社は負担がなくなる」「本人もいままで通りの収入を確保できる」と思いがちですが、雇用調整助成金は魔法のランプのようなものと思ってはいけません。

助成金受給までのキャッシュアウトを覚悟しないければならない

助成金は、休業前に政府から助成金が振り込まれるものではありません。

  1. 会社が従業員に休業手当をまず支払って、
  2. 何か月経過したのちに助成金の支給申請が認められたら
  3. 政府から助成金が支給される

仕組みです。

助成金が支給されるまでは、会社が満額休業手当を支給しなければなりませんので、助成金が支給されるまでの間は会社はキャッシュアウトすることになります。運転資金が厳しいにも関わらず安直に従業員を休業させてしまい、資金ショートとならないようにしなければなりません。
(もちろん、雇用保険を滞納していたりすると、助成金そのものは受給できません。)

また、雇用調整助成金の助成率は最大で支払った休業手当の額の90%(4月9日時点)ですので、10%は会社の持ち出しが残ることも忘れてはなりません。



雇用調整助成金の額は「支給額の6割」ではない


「休業させた際に支払った賃金日額(日当)の上限」が8,330円とあり、8,330円という言葉が若干独り歩きしていますが、8,330円×休業日数の金額が、そのままもらえる訳はありません。

  1. 休業手当は労働基準法第26条にあるとおり、賃金の60%以上を支払うことが求められており
  2. 賃金の60%とは「3か月(90日)の平均賃金」の金額になります。

なので、逆算すると

  •  8,330円÷90%(助成率)=9,256円(1日の休業手当の額)
  •  9,256円÷60%(休業手当の最低支給率)=15,427円(1日の賃金)
  • 15,427円×90日÷3か月=462,810円(1か月の平均賃金)

となります。


8,330円の上限額がもらえる人は、月収が46万程度の方に限られ、すべての人が8,330円もらえる訳ではありません。「聞いてないよー」となっても誰も助けてくれません。

仮に、月収が46万円の人が60%の休業手当をもらい、20日休業した場合
・9,256円(1日の休業手当の額)× 20日 = 185,120円(本人がもらう休業手当の額)
となり、185,120円÷462,810円=39.9%となり、通常の支給額の約4割しか収入がないということもポイントです。

この中から社会保険料等は控除されますので、実際の手取りはもっと少なくなります。試算したケースは通常の賃金の額が46万円ですので、それ以下の方はもっと少額になってしまいます。


会社命令で休業させるのではなく、労働条件の見直しではダメなの?


そもそもの問題は、「会社が休業になってしまったときに、従業員の生活を維持しつつ、余剰となった労働力に対するコストをどのように抑制するか?」です。

「助成金がもらえそうだ。会社都合で休業させよう」と、休業ありきで考えるのではなく、そもそも労働条件がアンバランスになってしまったのであれば、「労働条件を見直す」とい選択肢も当たってみて欲しいと思います。


冒頭にお伝えしたとおり、会社と従業員の間で雇用契約を結び、雇用契約にもとづき労働力の提供と賃金の支払いが発生しています。その前提条件がアンバランスになっていて、労働力が余ってしまっているのであれば、雇用契約そのものを見直すという方法をまず探ってみてはいかがでしょう?

 

たとえば、「3か月間、週5日勤務を週3日勤務にして、お給料を3/5にして欲しい」
などです。従業員の収入は60%になりますが、休業手当で実際の収入が40%になるよりかはダメージは小さいですし、会社側から見ても、すぐに人件費を抑制することができますので、キャッシュフローに頭を悩まさなくてもすむようになります。
もちろん合意することが前提です。一方的な条件の変更はNGですし、あとで言った言わないとならないよう、きちんと合意書は取り交わしましょう。

労使合意の上、固定的な賃金をある程度下げると、(数か月間の我慢は必要ですが)社会保険の月額変更(随時改定)という条件に該当することもあります。そうなると社会保険料が下がることもあり、労使ともに負担が下がるというメリットもあります。

 

給料を下げたくないなら、明日のメシの種まきに時間を使ってみる

「従業員に支払う給与を下げたくない。でも、無駄な人件費は支出したくない」と、どうしてもおっしゃるのであれば、仕事を割り振ることはできないか考えましょう。

例えば、接客業であれば、自粛でお店は閉店していても、家で寝ていることまでは求められていません。
通常営業中はやりたくても出来ていなかった、顧客台帳のメンテナンスや、ブログの記事の書き溜め、新メニューの開発など在宅でできることもありますし、店舗まで行くことができるのであれば、簡単な補修など、お客様がいるときには出来なかったこともできます。

「休業&在宅待機」ありきで考えるのではなく、今日のメシの仕事が止まってしまったいまこそ、あしたの仕事の種まきの好機ととらえ、自粛が解除されたときにスタートダッシュできる準備をしてみてはいかがでしょうか?


業績不振を理由に「辞めていただく」いう選択肢もあります。
そうなると「普通解雇」「整理解雇」「退職勧奨」「雇止め」などがありますし、会社都合で退職していただき、従業員は、いわゆる失業保険をすぐに受給してもらうようにするという方法もあります。

「やめていただく」という選択肢を選んだ場合、どの方法を選んだとしても、正しい手順を踏む必要がありますし、一度辞めてもらった場合、戻ってきてくれるとは限らないことも注意が必要です。「やめていただく」については、いろいろ論点や注意事項がありますので、また別の機会に紹介したいと思います。

 

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