コラム・レポート

2018-02-14

専門業務型裁量労働制に関する自主点検結果報告書

厚生労働省の公表情報

※2月2日にブログでご紹介した裁量労働制の自主点検について動きがありましたのでご紹介させていただきます。

専門業務型裁量労働制を導入している企業に、順次「自主点検結果報告書」が送付されてきています。様式の内容については、業種や地域に関わらず同様の内容のようです。

各事業場ごとに自主点検を行い、運用に問題がある場合は改善を行うとともに、自主点検結果報告書に記入しファックス等で2月21日までに労働局へ報告を行います。

 

Contents

労働局から送付されてきた自主点検表の内訳

会社ごとではなく、事業場(拠点)ごとに点検表が送付されてきます。また、自主点検の報告書が2枚と、点検のチェック項目の解説の紙(自主点検表)が7枚入っています。

報告書の1枚目に送付先のFAX番号と、番号都道府県の番号と所轄労働基準監督署の管轄の番号と3桁の番号(例:東京都目黒区の事業場所の場合は13-05-xxx)が入力されていますので、そちらをFAXすることになります。

仮に自主点検で不備があったとしても、改善予定日を記載する欄がありますので、提出期限の2月21日までに改善する必要はないようです。(改善予定日までに改善すれば良いようです)

 

どのような点検項目があるのか

点検項目は、以下の通りです。

 

1.対象労働者が従事している業務について

  • 対象労働者の人数
  • 業務内容
  • 上司からの指示(業務の遂行手段及び時間配分の決定について)

専門業務型裁量労働制の対象となる職種は限定列挙となっています。定義にない職種は適用対象外となりますので注意が必要です。(税理士は対象になるのですが、社労士は対象外になるのです。)
また、適用対象職種であっても、新人社員など、上司から細かに指示を受けている場合も適用対象外となります。

 

2.みなし労働時間等について

  • みなし労働時間は何時間か
  • 36協定の締結の有無
  • みなし労働時間の超過分の残業代支給について

専門業務型裁量労働制では、1日の業務時間を決める必要があります。(みなし労働時間)。このみなし労働時間が8時間を超える場合は、否応なく時間外労働が発生したということになりますので、時間外労働をさせるために必要となる36協定を締結し、労基署に提出する必要があります。

 

3.労働時間の状況について

  • 労働時間の把握の方法
  • 過去6か月間の労働時間の状況

裁量労働制にすると労働時間がみなしで固定されるので、勤怠管理は不要と思いがちですが、裁量労働制であっても勤怠管理は必要です。
勤怠管理は賃金計算のインプットとする目的の他に、安全配慮の観点から過重労働が無いか把握する目的もあります。勤怠管理をしていなかった場合は、勤怠管理を行う環境を整えていきましょう。

 

4.対象労働者の法定休日労働、深夜労働について

  • 過去6か月間の法定休日労働の状況
  • 法定休日労働・深夜労働時間の把握の方法
  • 割増賃金の支払いの有無

勤怠管理をしていなければ回答出来ない内容になります。
また、裁量労働制度を導入したら割増賃金は一切発生しない訳ではありません。専門業務型裁量労働制であっても、深夜22時~翌朝5時までの間で勤務した場合は、深夜の割増賃金を支払う必要があります。

 

5.対象労働者に対する健康・福祉確保措置について

  • 健康・福祉確保措置の内容、過去6か月実施状況
  • 労使協定の内容(健康等に問題が生じた場合などに専門業務型裁量労働制の適用見直しをすることを定めているか)
  • 過去6か月の適用見直しの状況

 

6.対象労働者に対する苦情処理の状況

  • 人数

裁量労働制を導入した場合、苦情の申出の窓口を決めておかなければなりません。

 

7.労使協定の周知状況

  • 周知方法

労使協定だけでなく、就業規則についても社員に周知しなければなりません。「就業規則を作成し、労働基準監督署に提出したあとは、金庫に封印」では就業規則は効果を発揮しません。
「就業規則を公開すると社員の権利意識が芽生えるので見せたくない」と思われる経営者の方も稀にいらっしゃいますが、就業規則は会社を守るためのルールでもありますので、職場の休憩室に掲示したり、イントラネットに公開するなど従業員に周知を行いましょう。

 

 

裁量労働制を導入しているが、自主点検表が届かなかった場合

2月2日の日経新聞の記事によると、「厚労省は1万3,000事業所に自主点検を指せる予定である」と報道されており、おそらく全ての事業所に点検表を送付していると思われます。
専門業務型裁量労働制を導入するためには労働基準監督署に「専門業務型裁量労働制に関する協定届」を提出する必要がありますので、労働基準監督署は、この「専門業務型裁量労働制に関する協定届」をもとに自主点検表を送付しているものと思われます。

つまり、自主点検表が送られてこなかった会社や拠点がある場合は、労働基準監督署に「専門業務型裁量労働制に関する協定届」が提出されていないか、有効期限が切れており、「名ばかり裁量労働制状態」になっている可能性があります。(みなし労働になっておらず、未払残業が発生している恐れもあります。)
自主点検表が届かなかった企業様は、「専門業務型裁量労働制に関する協定届」が提出されているか、有効期限が切れていないか確認してみましょう。

 

ウソの回答をしたり、回答をしなかった場合

労働基準法第104条の2で

  1. 行政官庁は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、使用者又は労働者に対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。
  2. 労働基準監督官は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、使用者又は労働者に対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。

とあり会社は労働基準監督署に必要事項報告の義務があります。また、労働基準法第120条では「次の各号の一に該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。」とあり、各号の中に「第104条の2の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は出頭しなかった者」とあります。そのため、自主点検表を報告をしない場合や、ウソの報告をした場合には、30万円以下の罰金になる可能性があります。

労働基準監督署の職員数は2,474名(「労働基準監督業務概要」2011年、本庁職員を除く)ですので、全員で1万3,000事業所に調査を行うとなると、5.25件/1人が担当することになります。

どこまで時間を掛けて、自主点検表の記載内容を確認するかは分かりませんが、1人あたり5件の割り当てであれば、全部連絡することも不可能ではない件数です。「忙しい労働基準監督官など来ない」など高をくくらず、虚偽の申告や未提出は避けた方が良いでしょう。

 

また、仮に虚偽の報告をして切り抜けたとしても、提供対象外の者に裁量労働制を適用しているという事実には変わりません。前回のブログで書いた通り、未払残業リスクは残り続けますので、これを機会に裁量労働制対象外の者についての扱いを再考することが賢明です。

 

改善事項が出てしまった場合

改善事項が出てしまった場合は、当然に改善を行っていくことになります。賃金の支払いについては、未払賃金部分の精算や、固定残業代制度への移行などが発生するでしょうし、勤怠管理を行っていなかった場合は、あらたに勤怠管理システムを導入していくことになります。このような人事管理の仕組みを移行するには、手順や従業員への十分な説明が必要になります。

当社では、このような労務管理の仕組みの移行や制度移行の支援や、労務監査・労働条件審査を行っています。
今回の自主点検で、労務管理の改善が必要となった企業様や、これを機会に労務管理の問題点を棚卸ししたい企業様は、ぜひ弊社までご相談ください。

 

前回のブログより(報道情報)

厚生労働省は「裁量労働制」を適用する事業所に対し、自主点検を求めることとし、都道府県労働局に通知しました。
裁量労働制を不適切に運用する事業所が後を絶たないことから、約1万3千事業所に2月中に報告書の提出を求めています。

ちなみに裁量労働制は、「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」があります。

  • 「専門業務型」:証券会社のアナリストや公認会計士、中小企業診断士など国が定めた業務に限る制度
  • 「企画業務型」:企画、立案、調査および分析を行う労働者を対象とした制度

特に企画業務型裁量労働制をめぐり、過去にはIT企業のS社や不動産販売業のN社が、対象でない社員に対し不適切に適用をしており、残業代を支払うよう労働局から是正勧告を受けています。

裁量労働制を適用している企業の人事担当者の方は、自社の協定内容の期限が切れていないか、職種は適切かなど今一度ご確認ください。

 

裁量労働制についてはこちらをご覧ください。

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/sairyo.html

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