委任契約と請負契約の具体的な違い
人事制度&賃金制度 動画(YouTube)&事務所通信働く人の中には「雇用契約」の他に、「委任契約」や「請負契約」で働く人もいます。
彼らは、”フリーランス”や”コントラクト”や”外注さん”などと言った名称で働いているのですが、彼らは委任契約で働いているのでしょうか?それとも請負契約で働いているのでしょうか?
外部の協力者という点では委任も請負も同じですが、掘り下げていくと「委任契約」と「請負契約」というのは似て非なるもの。具体的にどういった点が異なるのか確認してみましょう。
■前提
委任契約と請負契約は雇用契約ではありません。雇用契約でないということは、労働者ではではないため「厚生年金」「雇用保険」「労災保険」の被保険者にはなりません。
■定義:委任契約と請負契約は似て非なる契約
委任契約とは、契約の目的を「事務作業を業務委託して処理をする」契約です。委任契約の人は「仕事の結果を出すこと」は義務ではありません。
一方で、請負契約とは「仕事を完成させ結果を出す」契約です。「建築現場の大工が家を建てる」というケースが最も分かりやすい例でしょう。
「家を建てる」ということに対して請負契約を結んでいるため、「仕事を途中で放棄する」「仕事が出来ませんでした」ということは認められず、仕事を完成させ業務を遂行する必要があります。
■受託者の義務
委任契約は、「受託者」=「仕事を受けた人」は「委託者」=「仕事を発注した人」に対して善管注意義務(仕事を良心や責任に従い行っていく義務を持っているという事)が発生します。
請負契約では、「仕事を受けた人」は「仕事を発注した人」に対して業務を完成させる義務があります。先ほどの例で言うと、大工(=仕事を受けた人)は、業務(=家を完成させる)義務がある。ということです。
■報酬請求権
委任契約は、仕事の委任を受けた人は、委任した発注者に対して原則的には受託した業務を完了した際に報酬を頂きます。
更にその報酬と併せて業務上発生した経費を返金して頂く。という流れになります。
請負契約に関しては、基本的には仕事の完成が必須のため、仕事が完成された後でなければ報酬の請求が出来ません。
■契約解除権
委任契約では「仕事を受けた人」「仕事を発注した人」、双方ともいつでも、どちらからでも、契約を解除することが可能です。
請負契約は、仕事を受けた人は、仕事の完成を約束しています。そのため、仕事の途中での契約解除が出来ません。一方で、「仕事を発注した人」は、損害賠償を支払い契約を解除することが可能です。
先ほどの例で言うと、大工(=仕事を受けた人)に対して損害賠償を支払うことで契約解除が可能となります。
■瑕疵担保責任
瑕疵担保責任とは、仕事完了の仕上がりに対し、欠陥がある場合ので直してほしい。と要求することです。
委任契約については、「業務を処理すること」が仕事です。そのため、「結果を出す」ということを求められていません。よって、瑕疵担保責任という観点では責任は発生しない。と考えます。
一方で、請負契約については完成した業務に瑕疵、つまり欠陥があった場合は、「仕事を受けた人」が責任を負う必要があります。
家の建築を例に挙げます。家を建て納品したが、雨漏りがする欠陥住宅だったとします。それでは困るので、「仕事を発注した人」から当然、修繕依頼がきます。請負契約では、完成したはずの業務に瑕疵(=雨漏り)があったので「仕事を受けた人」(=大工)は「瑕疵担保責任」、つまり雨漏りに対する修繕の必要がある。という事です。
■報告義務
委任契約では、「仕事を発注した人」から報告の請求があった場合はいつでも受託した業務処理の状況報告をする必要があります。
請負契約は仕事の完成を約束しています。そのため、完成までのプロセスに関しては特別な指示を出すことは出来ません。受託者は途中の報告義務を負っていない点が特徴です。
■まとめ
このように「請負契約」と「委任契約」は言葉としては、少々馴染が薄く、違いを把握しずらいがために「何となく」言葉として使ってしまう可能性があります。
しかし、中身を吟味すると、委任契約と請負契約とでは、大きく異なる箇所があります。正社員以外の方を雇用する際にこの人は委任契約なのか、もしくは請負契約なのかという事に留意して下さい。
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