賃金データを使用し、年齢別役職別などの、様々な切り口で賃金の支払いの傾向を分析していきます。
「賃金制度」と聞くと、号俸テーブルの作り込みをイメージしがちですが、実はそれは一つの工程であって、賃金制度改定はもっと多くのテーマを検討していきます。
4.賃金分析を行います
賃金データを使用し、年齢別役職別などの、様々な切り口で賃金の支払いの傾向を分析していきます。
・「前職考慮」などをやりすぎているため、課長と給料が逆転している。
・同年代、同等級の従業員同士の賃金に差が大きすぎる
などを確認していきます。
検討にあたっては、特定の月で分析することも可能ですが、繁忙期と閑散期の比較や、
1年間の平均値も確認するとより深い検討が可能になります。
あわせて、回帰分析を用いて算出した現在のモデル賃金や、他社の賃金データをもとに、自社の報酬の水準を明確にしていきます。
賃金分析のポイント
賃金制度を設計する際の難所の一つとして賃金分析の作業があります。賃金分析では、横軸を年齢や役職などの属性、縦軸は金額とした散布図を作成し、「管理職と非管理職で年収額が重複している」「中途採用の方が、年収が高い傾向にある」というような、賃金支給の現状を可視化していきます。一般的にはエクセルを使って、いろいろな切り口の散布図を作成していくことになります。
賃金分析の結果をもとに新しい賃金テーブルを作成しますので、データの集め方・分析のしかたについては工夫が必要になります。特に大切なポイントを見ていきましょう。
データは1年分を収集
単月の賃金データで賃金分析をしてしまうと、繁忙期のデータを使用したり、その月は偶然残業が多かったなど、実態と異なる特殊事情を排除できないことがあります。単月の賃金だけでなく、賞与も含めた年収の分析も確認したいので、賃金分析を行う場合は、12か月分のデータをもとに分析を行いましょう。
賞与も忘れなく
「賃金分析」という名前から、毎月の賃金の金額を分析するような印象を受けがちですが、賃金制度を設計する際には、年収に占める毎月の賃金と賞与の割合も決めていきます。年収の実態を把握するためにも、賞与の支給実績も分析データとして集めておくことも忘れてはなりません。
属性も重要
賃金分析では、横軸が属性、縦軸が金額となる散布図を作成していきます。分析の際の属性を準備することも大切です。給与計算システムから出力される賃金データ(社員番号、個人名など)以外の、雇用形態(フルタイム/パート)、所属・役職・等級・年齢・勤続年数・中途入社/新卒入社と言った情報も集め、分析できるようにしておきましょう。
掛け合わせ
例えば「中途社員が優遇されている」という意見があったとしても、すべての中途入社者が優遇されているのではなく「中途入社×管理職」というような区分が優遇されていることもあります。単一の属性だけで分析するのではなく、属性の掛け合わせからも分析してみましょう。ただし、こだわり過ぎるとグラフ作成の沼にハマり込みますので、ここでも仮説を作成しておくことが大切です。
ポイント:賃金分析は経営指標も取り込む
「賃金分析」も単純に現在の社員の賃金台帳から階層ごとの賃金額の「高い・安い」を見ていくだけでなく、業界の平均値や、自社の過去数年間の決算書を確認し、売上高や粗利に対する人件費の割合(売上高人件費率や労働分配率と言います)を見て、人件費予算の目星をつけることも忘れてはなりません。
他社のデータについては、厚生労働省の賃金構造基本統計調査(賃金センサス)や、経済産業省のローカルベンチマーク(通称:ロカベン)や、TKCグループが提供するTKC経営指標(BAST)というデータを使用することができます。
厚生労働省 賃金構造基本統計調査
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou_a.html
経済産業省 ローカルベンチマーク
https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/sangyokinyu/locaben/
TKC全国回 TKC経営指標(BAST)(所属税理士に提供しているデータはさらに細かい)
https://www.tkc.jp/tkcnf/bast/