賃金分析では、賃金データを使用し賃金の支給状況を分析します。全従業員の平均値や中央値だけでなく、年齢別・役職別など様々な切り口で賃金支払の傾向を分析します。

「前職考慮をしすぎて給料が逆転している」「同年代の従業員間の賃金差が大きすぎる」など、職場で言われている不満のほか、気付かなかった問題点を数値で把握していきます。

賃金分析の目的とゴール

賃金分析では、在籍中の社員の年間の賃金・賞与のデータをもとに、縦軸を賃金(もしくは年収)、横軸を役職・職種・年齢・勤続年数といった属性で散布図をつくります。

作成した散布図を眺め、例えば「役職が上がると賃金は上昇するが、勤続年数が長くなっても賃金は上がらない」「部長職では年収の上限と下限で500万円差があり、部長の下限<課長の上限となっている」など自社ではどのように賃金が支給されているのかを把握していきます。

賃金分析で確認したいこと

賃金分析では、年齢別・役職別などの切り口で賃金の支払いの傾向を分析していきますが、分析をしていく属性として以下のようなものが挙げられます。

  • 年齢別:年功序列賃金なのか否か?
  • 勤続年数別:年功序列賃金なのか否か、能力や役職により賃金差があるか?
  • 役職別:下位等級との重複が無いか?
  • 資格等級別:職務遂行能力が向上し、資格が上がったら賃金に反映されているか?
  • 職種別:職種ごとの仕事の価値が表現されているか?
  • 性別:気づかないうちに、男女差の賃金格差が生まれていないか?
  • 新卒採用/中途採用別:前職考慮などの賃金設定が存在しているか?

などを確認していきます。

検討にあたっては、特定の月で分析することも可能ですが、繁忙期と閑散期の比較や、 1年間の平均値も確認するとより深い検討が可能になります。

あわせて、回帰分析を用いて算出した、現在のモデル賃金や、他社の賃金データをもとに、世間相場と比較した自社の報酬の水準を明確にしていきます。

賃金分析は、賃金制度を整備するための事前情報でしかありません。賃金分析の森に迷ってしまい、本来のゴールである賃金制度の整備が疎かにならないように、程々に割り切って進めていくことがポイントです。

賃金分析のポイント

賃金分析は、賃金制度を設計する際の難所の一つとして挙げられます。

賃金分析は、横軸を年齢や役職などの属性、縦軸は金額とした散布図を作成し、賃金支給の現状を可視化していく作業です。一般的にはエクセルを使って散布図を作成していくのですが、散布図を作る手間や、集めた賃金データの精度によって適切な分析ができなかったり、手戻りが発生してしまい、分析に時間がかかったりすることがあります。

賃金分析の結果をもとに、新しい賃金テーブルを作成しますので、誤った分析はできません。
データの集め方・分析のしかたには工夫が必要になります。特に大切なポイントを見ていきましょう。

データは1年分を収集

単月の賃金データで賃金分析をしてしまうと、繁忙期のデータを使用したり、その月は偶然残業が多かったなど、実態と異なる特殊事情を排除できないことがあります。

単月の賃金だけでなく、賞与も含めた年収の分析も確認したいので、賃金分析を行う場合は12か月分のデータをもとに分析を行いましょう。

賞与も忘れなく

「賃金分析」という名前から、毎月の賃金の金額を分析するような印象を受けがちですが、賃金制度を設計する際には、年収に占める毎月の賃金と賞与の割合も決めていきます。

年収の実態を把握するためにも、賞与の支給実績も分析データとして集めておくことも忘れてはなりません。

属性も重要

賃金分析では、横軸が属性、縦軸が金額となる散布図を作成していきます。分析の際の属性を準備することも大切です。

給与計算システムから出力される賃金データ(社員番号、個人名など)以外の、雇用形態(フルタイム/パート)、所属・役職・等級・年齢・勤続年数・中途入社/新卒入社と言った情報も集め、分析できるようにしておきましょう。

掛け合わせ

例えば「中途社員が優遇されている」という意見があったとしても、すべての中途入社者が優遇されているのではなく「中途入社×管理職」というような区分が優遇されていることもあります。

単一の属性だけで分析するのではなく、属性の掛け合わせからも分析してみましょう。ただし、こだわり過ぎるとグラフ作成の沼にハマり込みますので、ここでも仮説を作成しておくことが大切です。

やみくもに分析をしても時間がかかってしまいます。ある程度、仮説を決めておき、分析内容を絞っておくことも賃金分析のポイントです。

ポイント:賃金分析は経営指標も取り込む

「賃金分析」も単純に現在の社員の賃金台帳から、階層ごとの賃金額の「高い・安い」を見ていくだけでなく業界の平均値や、自社の過去数年間の決算書を確認し、売上高や粗利に対する人件費の割合(「売上高人件費率」や「労働分配率」と言います)を見て、人件費予算の目星をつけることも忘れてはなりません。

他社のデータについては、厚生労働省の賃金構造基本統計調査(賃金センサス)や、経済産業省のローカルベンチマーク(通称:ロカベン)や、TKCグループが提供するTKC経営指標(BAST)というデータを使用することができます。

賃金制度を整備する目的の一つとして、筋肉質な組織に生まれ変わり業績向上を目指すことも含まれます。経営の目線や時系列の経営状態の変遷も併せて確認していくことを推奨します。

外部の専門家に賃金制度の整備の支援を求めるのであれば、少なくとも経営目線を持つコンサルティング会社や社会保険労務士事務所なのか?を確認することがポイントです。
ただし、経営目線を持つ会社と言っても、担当するコンサルタントが経営目線を持っているとは限りませんので、担当するコンサルタントの力量も見極めていきましょう。

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