賃金制度の進め方とは?

「賃金制度の改訂」と聞くと、「どんな人に、どのくらいの金額を支給しよう!」と、賃金テーブルの書き換えや支給額の試算から手を付けたいという衝動に駆られます。

しかし、賃金制度の改訂を成功させるためには、賃金テーブルの修正にいきなり着手するのではなく、会社の理念や人材マネジメントの方針をしっかり固めることを忘れてはなりません。また、賃金テーブルを修正した後の制度移行についてもおろそかにしてはなりません。

また、ついつい忘れがちになってしまいますが、稼動後の運用負荷についても考慮しなければなりません。「賃金制度のコンセプトは良いが、毎月の給与計算実務で運用できない。労働基準法を始めとする法律に抵触してしまう。」となってしまっては、せっかく作った賃金制度も絵に描いた餅になってしまいます。

社会保険労務士法人アイプラスが支援する場合の、賃金制度改定の進め方をご紹介します。

賃金制度の設計の流れ

Step1:現状の分析と基本方針を決める

1
会社の理念やコンセプトを整理していきます。

3C・5Fのフレームワークなども活用し会社の競争優位性や、社長が言葉にできない、会社のビジョン・経営理念を明確にします。
会社の理念やありたい姿は、なかなか言語化しにくいものです。弊社はこれらを明確にするにあたっては、コーチングの手法を用い、経営幹部の皆様の思いを引き出していきます。

2
人事制度に対する社員の意識を確認していきます。

現場の従業員が人事制度に対してどのような意識を持っているのかを調査をすること可能です。現在の処遇に関するインタビューや、グループヒアリングも行う事ができます。また、人事制度に関する意識調査や満足度調査などのアンケートも実施可能です。
現場に対して「賃金制度はどうあるべきですか?」と聞いても、「もっと給料を上げて欲しい」と言われてしまいます。
アンケートやインタビューを行う場合は、このようにならないよう、設問を設計していくことがポイントになります。

3
人材活用の方針(人材マネジメントポリシー)を検討していきます。

人材をどのように活用していくのか、自社にとって良い仕事とは何か、どのような従業員をGood Job!と評価していくのかを整理していきます。
人材マネジメントポリシーを決めていくにあたっては、(1)会社の経営理念、(2)現状の課題、(3)自社の強みや競争優位性を加味しつつ定義をしていきます。

4
賃金分析を行います。

貴社の賃金データをお借りし、年齢別役職別などの、様々な切り口で賃金の支払いの傾向を分析していきます。
・「前職考慮」などをやりすぎているため、課長と給料が逆転している。
・同年代、同等級の従業員同士の賃金に差が大きすぎるなど。
あわせて、回帰分析を用いて算出した現在のモデル賃金や、他社の賃金データをもとに、自社の報酬の水準を明確にしていきます。

Step2:現状の分析と基本方針を決める

1
賃金の構成要素を考え、テーブルの素案を作ります。

現在の給料の内訳の意味を議論していきます。どのような理由に対して、現在の給料の何割ぐらい支払われているかを明らかにします。
また、サンプル抽出した従業員同士を比較して、給料の支払い方の矛盾点を見つけ、あるべき姿の賃金の構成を決めていきます。

2
賃金テーブルを作成していきます。

どのような、賃金の要素で構成されているか決めたあとは、それぞれの賃金の要素ごとに賃金テーブルを設計していきます。
賃金テーブルの形、ピッチ幅、昇格昇給の金額などを決めていきます。

3
賃金シミュレーション(実在者の試算)を行います。

作成した賃金テーブルを実際の従業員に当てはめ新制度での賃金額を試算します。
現状の賃金と新賃金を比較し、新旧の差額や意図した人物に意図した金額が支給されているかを確認しながら、賃金テーブルや各種手当の金額を調整していきます。

Step3:制度移行と社員への周知

1
移行方法を検討します。

賃金制度には、労働の対価の支払いという側面の他に、生活保障の側面もあります。
急激な賃金ダウンは従業員の生活を不安定にさせてしまい、不利益変更に該当する可能性が高くなります。
一方で、調整給という形で賃金を支給し続けると、総額人件費のコントロールができなくなります。
「賃金テーブルが完成したら、おしまい。」ではなく、どのように移行させ着地させていくのかを考えていきます。

2
従業員向けに人事制度の説明資料やハンドブックを作成します。

立派な賃金制度を整備しても、現場に理解され、使いこなしてくれないと意味がありません。
賃金規程の更新は必須ですが、日々忙しい現場のメンバーに向けて、制度改定の趣旨や新しい賃金制度のポイントが簡単にわかる説明資料やハンドブックを用意します。

3
労使交渉の支援をしていきます。

労働法に明るくない場合、「組合がダメと言ってくるものは、本当にダメなのか?」、「どこまでが法令違反になるのか?」労働組合との交渉を進めるうえで不安なことは、たくさん出てきます。
また、会社側の不用意な一言で、労使交渉が不利になってしまう場合もあります。
労使交渉の進め方、組合への話の伝え方、法律の知識のレクチャーなどにより、労使交渉を側面から支援していきます。

4
制度改定の説明会の開催をします。

人は、急な変更や、経緯のわからない変化に対して抵抗感を覚えます。
どのような理由で賃金制度を変更するのか理由を説明し、合意形成を行っていきます。(フェアプロセスの原則)
具体的なコミュニケーションの流れとしては、
(1)新しい賃金制度の趣旨や、制度の骨格などを説明する全体の説明会
(2)説明会以降に出てくる、質問に対する対応(ヘルプデスクの設置や、ランチミーティングによる回答など)
(3)個人別の格付けや、新報酬額の個別面談、通知書の作成・交付を行っていきます。
などがあげられます。
また、コミュニケーションの媒体としても、説明会だけでなく、パンフレット・ポスターなど古典的なものから、
電子メールや社内向けのメールマガジン、イントラネットなども有用です。
最近はメディア技術が手軽になったので、動画配信やテレビ会議・簡単なeラーニングコンテンツの製作なども視野に入れると良いでしょう。
※制度を検討する際に現場の意見を聴収していくことも可能です。

Step4:業績機関への届出

就業規則・賃金規程の改定、労働基準監督署への届出を行います。

新しい賃金制度に変更したら、就業規則や賃金規程の変更を行い労働基準監督署に提出する必要があります。

就業規則の変更ですので、支店や営業所がある場合は、各事業場を管轄する労働基準監督署に「就業規則変更届」の提出をする必要があります。
(就業規則・36協定の本社一括届出制度を使うことも可能です。)

弊社は社労士事務所ですので、就業規則・賃金規程の改定・労働基準監督署への届出代行も合わせて対応が可能です。(締日の変更等・端数処理の変更などの、業務オペレーションの明確化にも対応が可能です。)

助成金の申請をしていきます。

助成金を取得することを目的としては本末転倒ですが、賃金制度の変更により助成金が申請できる可能性が出てくることがあります。

助成金取得の条件を満たすかどうかを確認し、社労士事務所ですので、助成金申請を代行することも可能です。
 コラム:賃金・評価制度の整備に関する助成金

給与計算のアウトソーシングも行います。

せっかく整備した賃金制度も、きちんと給与計算ができなければ形骸化してしまいます。

弊社は給与計算のアウトソーシングも請け負っていますので、「賃金制度はコンサルティング会社に設計してもらったけど、給与計算業務の変更や、毎月の給与計算が大変。」とはなりません。

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